コレー



 行為はチョコレートに似ていると思う。
 チョコレート、と聞いて人は普通何を思い浮かべるだろう。あの匂い。他のどの菓子とも違う独特の甘さ。色。固形物が口の中で溶けて液体に変わる妙だろうか。それともカカオによってもたらされる軽い酩酊を?
 さらりとしていた手触りが、やがて暖かくなって湿度を帯びる変化。薄い包装紙を剥くときの、あるかなきかの頼りない感触。徐々に中身が現れてゆく高揚感。嗅ぎ慣れた匂い。笑っているような真面目なような、曖昧な彼の眼。
 強固な彼の自我がゆるやかにほどけて正体をなくす瞬間。彼の性格を知るからこそよく分かる、彼が決して誰にも見せないだろう表情や声が、無造作に自分に向けられる様は、舌にも歯にも極上に甘い。他のどの甘みにも代え難い。
 耳元で聞こえる、人間の乱れた呼吸というものは、同族である人間を酩酊させる作用があるような気がする。自分の身体によって相手が得ている快感と、相手の身体によって自分が得ている快感が、その耳元の呼吸によってどろどろと混ざるような錯覚。
 自分が声を上げて縋り付くのも、自分に哀願をするのも、自分がサディスティックに苛むのも、自分が名を呼ぶのも、自分の名を呼ぶのも、まったく同じ人物であるという閉塞した濃厚な愉しみ。
 食べ終わった後の重々しい充足感。感覚器の全てがチョコレートで一杯になり、その甘さと匂いはしばらく身に残る。
 食べ過ぎるのは体によくない。しかし全く食べないというのも何か物足りない。

 チョコレートは物理的に飢えを満たす優秀な食品だが、同時に人の心も少しだけ幸福な気分にする不思議な食べ物だと思う。



オンリーでもらったシリルなパワーで書きました。
(えっ。そのパワーはえろかったの?)
オンリーに参加していらした全ての方へのお礼と
行けなかった方へのお土産です。
これでは到底足りないけど!雰囲気だけでも。

あんなステキなお菓子のチョコレートを見て
こんな変態的な妄想をするのは
シリかルか分からないように一人称を曖昧にしています。
わーでも先生は哀願とかするんでしょうか。鼻血でますね。
シリウスだったとしても、ごはん3杯食べられますね。