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 声が好きで匂いが好きで、手のひらが好きで動作が好きで、彼が側に来ると嬉しくて嬉しくて尻尾が動いて、訳が分からなくなって、引っ繰り返って腹を見せたくてどうしようもなくなる。
 これは犬の姿の時の話。
 そして勿論犬の姿の時でも、シリウスはそういう素振りは見せない。じっと我慢して座っている。動悸は早くなるが、如何にもつまらないというような顔をして違う方向を見ている。リーマスは笑ってそんな犬の耳の後ろを掻いたりする。尻尾が少しだけ動く。
 なので人間の姿の時に、リーマスがあの態度を取るとシリウスは動けなくなる。
 自分の高さの半分くらいしかないものを見下ろす目や、確認するように名を呼ぶゆっくりとした声や、明らかに人間でない物を撫でる手つきや。そういう態度をされるとシリウスは「尻尾を振ってはいけない。腹を見せてはいけない。吠えてはいけない」という自制を思い出して、つい目を逸らせてしまう。そうするといつの間にかシャツのボタンが2つばかり外されているという寸法だ。
 これは良くない、とシリウスは思う。
 勿論互いが望む限りこの手の事は均等であらねばならないが、それが犬の姿の時の刷り込みによって行われるのは良くない。
 人間の男である自分は、彼を愉しむのが好きなのだ。シリウスは心の中で何度も確認したその主張をまた思い出して、慌てて友人の両手首を掴み取る。リーマスはいたずらっぽい顔をして捕われた手をひらひらと振った。
「飼い犬役のパートタイムは終了だ」
 シリウスは厳かにそう宣言して、リーマスを横たえ満足そうに口付けを始める。
 けれど、やれやれという感じでシリウスの背に手を回すリーマスの表情は、まるっきり大犬にのしかかられてそこら中を舐めまわされる悪さを受けている人のものだった。
 彼と抱き合っているシリウスは、その事に気付く様子もないようであるが。






賭け、というほどでもない当てっこのような事をしていて、
相手の方が外されてルシリを書いてくださったのですが
(以前にも1度あったようなパターン)
書いてくださった作品があんまり可愛かったので書き返しました。

その当てっこは、
実は私のほうが判断材料を多く握っていて、
条件が有利だったので……申し訳なかったでス…。

多少相手の方の書かれたものの続きっぽく、
そして相手の方のシリルキャラクタに似るよう
意識して書いてみたつもりです。
2005/12/24