「字の大きな人」という通り名を持つ
夜寝る前に謳う歌のかんだみのり様が
プレゼントくださいました。

カツあげ続けて創業1100年  .
ヤンキー本舗ハウチワマメでございます。
ありがとうございます。     .
(毎年明けに何かを頂いている……)

さあ、かんだ様!今日は是非  .
この素敵絵の感想を大きな文字で!!












調子に乗って、いっちょ駄文を付けてみました。↓



 ダンスと不可抗力



 仕方がないよ、シリウス。
 リーマスは心の中で溜息をついた。
 まったく仕方がない。

 リーマスとその友人シリウス・ブラックは踊っている。彼らの部屋で。ダンスの話題になって30秒後だった。
「違う違うリーマス、足は一歩一歩スープを掬う感じだ……そうそう」
 2人は踊っている訳であるから、当然大変接近した状態にある。距離というものがないくらいに。リーマスの首筋や頬にシリウスの吐息が触れる。いつもなら「顔」だと認識している物の一つ一つのパーツ、眼球であるとか唇であるとか。それらが拡大鏡で見たもののように巨大に子細に目に飛び込んでくる。多くの人は、他人と距離のない位置に居る事に本能的な恐れを抱き、挙動が乱れる。リーマスも、その多くの人の中の1人だった。
 しかしシリウスはちっとも気後れする様子がない。これまでの人生、毎日部屋で友人と踊ってきましたと言わんばかりに堂々としている。そしていつも通りきっちりと、他人の扱いがエレガントだった。彼は人に、その人間の纏っている空気を薄く残すようにして触れる。
「腰から上はほとんど上下しないように……うん。飲み込みがいいな」
 黒い髪から覗く鋭い眼は、けれど笑むとその名に負けぬくらい暖かく輝く。彼のように美しい顔をしたものが見せる気さくな表情。人を寄せ付けない風でいながら、案外世話焼きでもある意外性。人が自分に従わぬ事など、考えた事もないだろう自信に満ちた表情と態度。
「女性と踊るときは、このウェストに置いた手と目線で方向と動きを指示するんだ。女に恥をかかせるなよ?それは社交会において死を意味する」
 魅力というものについてリーマスは考える。それは容姿と性格と能力と所作と特徴が微妙なバランスをとって生まれる体臭のようにオートマティックな物で、本人には消すことができずそして他人に真似ることも出来ないのだと。
 もし犬だったなら、撫でて欲しくて足元に駆け寄っただろう。もし馬なら関心を買うためにこうべを垂れたに違いない。ましてや同族の女性など。


 最近シリウスは頻繁に女性に関してショッキングな経験をしてる。
 上級生の女生徒に呼び出されて行ったある夜など、半死人のような青い顔で戻ってきて、
「部屋に入ったら女の子がハダカで……それで……」
 と言ったきり、口元を覆って黙り込んでしまった。相手の名誉の問題に気付いたのかそれ以上何も語らなくなった気の毒な彼を、同室の3人で随分と慰めたものだ。なにしろ幾ら世慣れている風だとはいっても3年生なのだ。


 本当に。君が悪いんじゃないけどね。
 でも、仕方がないよ。君が騒がれるのは。
 リーマスは心の中でこっそりと繰り返す。
 でも僕は男で、それから友達だから。こうやってくっついて踊っていても、ゲッともグッともこない。それだけは安心してていいよ。シリウス。
 自分が素っ頓狂な方向から慰められているとは露知らず、シリウスはステップを踏みつづけた。

 相変わらずのハンサムな笑顔だった。



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