「首」











「龍三と七人の子分たち」以来約8年ぶりの監督脚本作品。
信長統治下の不安定なパワーバランスを、
監督の独自解釈でシニカルに描くR15作品。
タイトル通りバンバン首が飛びます。
げろもあります(それ以外にも色々ありすぎるが)。

内容ばれ

男同士の友情をBLにするなとはよく聞く意見ですが、
北野監督は今回、寵愛や謀反などの武将同士の関係の変化を、
性愛による嫉妬懸想が原因でもあるという風に解釈した。
しかし日本にあった衆道関係とも違い
そこには権力勾配がなく(光秀と村重には)
どちらかといえば西洋の同性愛関係に近い。
かと思えば本来の衆道に近い関係もあり(信長と蘭丸)本当に独特である。
ファンタジーホモソーシャル時代劇という感じ。

村重おまんじゅうエピソードは文献にあるらしい。
村重はあのあと箱の中から脱出して生き延びたことになるが、
一体どうやった?フーディニかよ!?

光秀は、西島さんの平常力の強い演技が生きた、
とても味のある狂人造形だった。
あの中にいると常識人に見えるけど
全然そんなことないという。
「以前から懸想しておりました!」
てきなことを咄嗟に言ったところの表情とか
「命が惜しくて咄嗟に口走ってしまった…」
てきなセリフのところとか。
(北野監督、麒麟がくるをご覧になっていたのか?)

造形としての首の出来具合は今一つのように見えました。
最初に出てきた、中からザリガニがこんにちはしてるやつはよかった。
(首じゃないけど)

監督は、やはり少し年を取られたな、と思う部分もあり、
家康の草履を懐に入れた後で3人でわちゃわゃしている
アドリブっぽいシーン、ここは10秒くらいでいいのでは?
っていうのが切られずに長々と入っていたりとか、そういうの。
あと細かいことを言うと「とんでもございません」とかメジャーな誤用が
(現在では言葉の変遷として定着しつつあるが)
時代劇のセリフに入っていると、格が下がるように感じた。

でもまあ湿度の低い、とぼけたような味わいの死と暴力を描けるのは
北野監督の芸風だなあと思いました。










2023.11.24 サイトに掲載

2024.05.07 再掲載





戻る