「バービー」 グレタ・ガーウィグ監督 バービーワールドで毎日おしゃれでハッピーで最高の生活を送っていたバービーは、 ある日、死について気にかけるようになる。 そうするとなぜか足裏が平べったくなり、セルライトができ、 キラキラの生活に影が差す。 街はずれに住む変わり者バービーに相談すると、 人間界へ行き、自分の持ち主と会えば元通りになるだろうとアドバイスされるが… というあらすじ。コメディです。 バービーハウスでの暮らしの表現が良かった。 バービーマニアック知識が随所で学べたが、 頭がおかしかったのかな?という廃盤の商品が色々あった。 大人でもバービーが欲しくなる映画で、 マテル社にとってはプラスになっただろうけど、 脚本の段階でよくOK出したな?という内容だった。 (わりとマテル社が悪く描かれている) 女性監督、歴代興行収入NO1とのことで、めでたいです。 名前で世界的にお客が呼べる男性監督は無数にいらっしゃるけど 名前で世界的にお客が呼べる女性監督はほぼゼロですからね。 グレタ・ガーウィグ監督、頑張っていただきたい。 単発洋画にしては座席は結構埋まっていた。 英語話者とみられるお客さんがとても多く。 私には分からないところで笑い声があがって、羨ましかった。 ラストまでばれ 生活がキラキラじゃなくなるところ、天人五衰を連想した。 あと、女性優位の国で生きてきて、 セクハラを知らないバービーが初めて性的な言葉をかけられ、 意味は分からないなりに憤慨していたところは切なかった。 ところで、少女と会って彼女の問題を解決し めでたしめでたしというのが主軸かなと思っていたが 全然そうではなく、むしろケンを描く物語だったのがとても意外だった。 ケン=男を馬鹿に描いている!と怒っている感想がSNSで流れてきたが、 むしろ、なんというかあの世界のケンは現実世界の女ではないかと思った。 すべての職を片方の性別が占有して、 片方の性別だけで集まって楽しく遊び、 もう片方は家も財産も教養もなく、異性の歓心を買うしか生きるよすががない。 なので、男性が感情移入すべきなのはバービーワールドのバービーなのではないか? そしてこの世界の女性がやるべきことは、 ケンたちがやったような逆転世界を作るクーデターではなく 男性も女性も同じ種族として敬意をもって接し、 機会が平等に得られる社会の創造なのでは。 悲しい時は寄り添いましょう。ともに笑いましょう。 でもそれは性愛とは違います…ということなのかと思いました。 あと母親と反抗期で狼のような娘、という取り合わせで 「レディバード」を連想したが、今回の母子の関係は良かった。 レディバードはお母さんが少し気の毒だったから。 コメディ映画なので、 コメディおよびコメディセンスに価値を見出さない人の評価は下がるかも。 しかし2001年宇宙の旅パロディや、 車移動で後部座席に人がいて叫ぶ天丼、 マーゴット・ロビーの顔で言ったら台無しというメタジョーク、 ユーモアセンスに特に方向性がないので 本来はジョークがお好きではなく、意識的に取り入れておられるのかな? などと想像しました。 (突然の高慢と偏見、スナイダーカットなど、どう受け止めていいか分からないねたもあった) 対して皮肉のセンスには方向性があり冴えていた。 スポーツに疎い振り、PCに疎い振り、財テクに疎い振り、ゴッドファーザーの解説を聞きたがれば ケンはチョロく釣れるわよ…のところとか。 アメリカの若い男性ってコッポラ好きな人が多いの?ずいぶん渋いな? ダークナイトじゃないんだ…。 ラスト、ハンドラー姓を名乗ったので書類上は ルース・ハンドラー氏の縁者ということになったんだろうか。 それにしてもこの内容の映画が大ヒットして人が押し寄せる国は 観客が成熟していると思う。 Barbernheimer(バーベンハイマー)問題 映画の内容とは関係のない、備忘録のようなものなので 興味ない方は下記、読む必要はありません。 同日公開のノーラン監督「オッペンハイマー」と「バービー」、 まったくジャンルの違う映画がどちらも好調で、 両方の映画を楽しむ、まあ焼き肉ビールの後にシメはパフェてきな 「Barbernheimer」というタグが作られ盛り上がりました。 それは近頃配信に押されがちの劇場にとってよかったんですが バービーと原子爆弾、きのこ雲のコラ画像がファンによって作られ始め、 バービーのSNSアカウントがその画像に対し 「忘れられない夏になりそう!」てきな返事をしました。 それに日本からの抗議が殺到、 まずワーナージャパンが謝罪、次にワーナー本社が遺憾の意を記事にして、 問題になったレスは削除されました。 謝罪はしないだろうと私は予想していたので、意外でした。 謝罪が出たことで、今後似た問題は起こりにくくなったと思います。 それは今回すぐに抗議してくださったたくさんの人たちのおかげです。 (ワーナー規模の企業はSNS運営などは外注に出すらしいですが) 原子爆弾について、アメリカでは戦争終結に必要だったと考える人が多く、 ポジティブなイメージがあるらしいので、担当者は深く考えなかったのでしょうけど 今後はSNS運営にも監修の必要性を感じます。 あと本気なのか冗談なのか、またはなりすましなのか、ロシアがいっちょ噛みしてきて 「アメリカひどーい!アメリカって本当にひどいよね!」 という投稿を見かけましたが、 娯楽作品販促SNSの範疇を超えた危うい局面だったのかも…分かりませんが…。 日本側も911の画像にバービーをコラージュした投稿を始めたりなどして それに対しおそらくアメリカの人が「真珠湾って知ってる?」と尋ねていたが (21世紀にリメンバーパールハーバーが活用されるのを見てしまった) 私も、「何の罪もない市民が犠牲に!」という論調の方が多かったので少し疑問でした。 宣戦布告なしに真珠湾を攻撃したのは日本だって教育は今もされてるよね…?と。 別に強制されたわけでも、騙されたわけでもなく前のめりで戦争してたってのと 我々はわりと簡単に他国を憎むようになるし、 おだてられるとすぐに調子に乗って戦う側に回るよ!って自覚してないと また戦争になってボコボコにされてしまう…。 あとアメリカくんは、自国軍がミスをして撃ち漏らした核兵器が 頭上に落ちる可能性がちょっぴりある現在、 大量破壊兵器に対する認識はそのままでいいのかな?とは問いたい。 2023.08.13 サイトに掲載 2024.05.07 再掲載 戻る |