「 エルヴィス 」 総本家バズ・ラーマン名物「破滅する美しい男」。 冒頭の、独白のためだけに用意された背景美術、 再現された当時のファッション、大道具小道具、 現在の歌に過去の歌がカットバックする濃さ、 美しい破滅に歴史と音楽史を絡める手腕、 秒を惜しんで流れる物語と音楽、 ぜんぶが豪華絢爛でthe 映画!という感じだった。 極貧だったエルヴィス少年が、 生まれ育った黒人住宅街で吸収した音楽を自らのスタイルに取り入れ やがて世界に愛されるようになるが、それらに終わりが来る…というあらすじ。 ラストまでばれ? ベガスでの契約のくだり、 「罠から逃げられない」って歌詞をかぶせてくるのとか、 金額を書いた紙ナプキンを握った手でハグするのとか、 カー!痺れるね!と思いました。 タイトルは「エルヴィス」 だけど、実質大佐が準主役くらいの扱いで、 トム・ハンクスは今回もいい仕事だった。 大佐、 複雑な人で、最初に独白した通り 「音楽のことは分からん」。 復帰TV中継のシーンを見ると明らかだけど、 時代に乗っているとか COOLだとかは全く分かってない。 でも人の反応を見て、当たる当たらないを嗅ぎ分ける能力はある。 人を操る才能はあるのに、実務能力は穴だらけ。 最初から最後までの経緯をざっと読むと 糟糠の妻、でも現在は冷めきっているという感じ。 これはポエムなのですが、 私たち、地球上に何億人もいるような凡人は、 特別なギフトを天から与えられた美しい、賢い、清らかな、奇麗な、たぐいまれな人間を見ると、 それに群がって、蛆虫のように食い荒らさずにはいられない。 なぜならその汁が甘いから。選ばれた彼等が好きだから。選ばれた彼等が憎いから。 でも彼等は食われても逃げずにじっとしている。 なぜなら彼等の多くはひどく寂しがりやだから。 たぶん神もその様子を見るのが大好きだし、だから天才の破滅の物語は人気がある。 (大佐が金ヅルをしゃぶりつくすのはともかく、実の父、あんた…って思ったけど) 1対1の穏やかな愛では、何千何万から熱烈に愛されるエネルギーの代わりにはならないんでしょうね。 作中でも言ってましたけど、大衆からの愛の中毒にならずに 妻を選んでいれば、あるいは助かったのかも…。 不勉強なので知りませんでしたが、当時は同じ音楽を歌っても 歌手の人種によってジャンルが変わったんですね。 それで、その垣根をぶち壊したのがエルヴィスだったと。 そりゃ今でも尊敬を集める訳ですわ。 バズ・ラーマン名物「破滅する美しい男」、 もし未見であれば「華麗なるギャッツビー」おすすめです。 2022.07.07 サイトに掲載 2023.05.07 再掲載 戻る |