「 THE BATMAN ザ・バットマン 」 ノーラン版以来10年ぶりほどのバットマン単独映画。 今回はロバート・パティンソンがブルース・ウェインを演じます。 マット・リーヴス監督。 幼い頃に父と母を殺された富豪のブルース・ウェインは、 ゴッサムの悪を狩り続けることで復讐を果たしていた。 そんなゴッサムに市長選が近付いていたが、 現職市長が殺されるという事件が起こり、 その犯人はバットマンに宛てたメッセージを残していた…というあらすじ。 ミステリのフレーバーと、ホラー(「ソウ」とかああいう系)のフレーバーがたっぷりまぶされていて 私の好きな感じでした。 (でもミステリやホラーではなく、演出や音や小道具、照明がとてもそれっぽい) ゴッサムの治安の悪さは過去最高で、司法と行政が機能不全に陥りかけでした。 そして過去のバットマンたちって、みんなちゃんとした大人だったな…と今回思ったんですが、 過去最高に壊れかけたブルースで、どうしていいか分からずに困っている子供のようでした。 ロバート・パティンソン氏、よくこのジャストの年齢、ジャストの体型、ジャストの演技力で バットマンを演じてくれた。 あのティム・バートンの絵から抜け出たような陰鬱な眼、真一文字の口、 図体ばかり大きくて、不安そうなふるまい。いつ死んでもいいという虚無の目、 スタッフさんはよく撮ってくれました。永久に残る。すばらしい。 今回の映画はDCEU世界に属さないようです。なので単体映画として見られます。 時間は3時間で、ちょっと長め。 最近のヒーロー映画と比べるとダーク、ノワール寄り。お好きなかたは映画館へ。 自然災害描写があるので、フラッシュバックを起こす危険のある人にはすすめません。 ラストまでばれ ものすごく偏ったニッチ路線の印象なんだけども案外バランス感覚にも優れていて、 親から受け継いだ資産を持つ富豪の主人公に、 正常な社会生活を送れないような過剰ともいえるペナルティを課したり、 富める孤児と資産ゼロの孤児を対比させたり、 貧困白人層右傾武装と、不殺のバットマンをうまく対比させたり、 復讐に憑かれた自分が、ゴッサムをさらに荒廃させていると気付いたブルースが 闇から出て光に向かう選択といい、安定感があった。 監督の過去作「クローバーフィールド」とか「猿の惑星」とかなんですよね。納得。(「モールス」もだけど…) 私は予告から勝手に「実は彼はブルースを失ったロビンで、贖罪のためにバットマンを継承したのでは?」 「それで自分はブルースだと思い込んでいるのでは?」「アルフレッドは合わせてあげているのでは?」 「リドラーはそれを暴こうとしているのでは?」 と予想してましたが大外れでしたね。財団の会計士と会おうとしないのも伏線かと思ったんですが 普通にお仕事放棄しているブルース・ウェインだった! 今回のアルフレッドが一番疑似親子ぽかった。 私にとっては股間からヴィブラニウムおじさんなのですが、さすがに全然面影もなく、 長年の育児の苦悩が推し量れる演技でした。カフスボタンを渡すところ、よかったです。 ゴードンは金のにおいの全然しない、清廉潔白なゴードンでした。 ブルースが懐くのが分かる。 先代のウェイン夫妻、父がウェイン家、母がアーカム家の血統という設定、 一応過去のコミックでもあったらしい。母の事件、続編で扱われるだろうか。 セリーナとの関係は、一対一の恋愛関係になれるほどブルースが成熟していないので 女の子が年上の小学生の男女の友情みたいでしたけど、 最後人として他人の身を気遣える余裕の出来たブルースに感涙した(とアルフレッドが言ってました)。 今回のバットマンは、何回か「訳分かんねえ!」「やべえやつ!」と悪人に言われていますが 本当にモンスター的な登場、動きで、 バットモービルとかもデュラハンの馬コシュタ・バワーやバスカヴィルの犬のような出現演出でよかった。 それで警察署や事件現場にもノシノシやってきて証拠品にべたべた触って怒られるの、 シリアスギャグ手前の趣がありました。 アクションはちょっとモッサリしてたけども、高所から飛び降りる時に躊躇する雰囲気で、 フライングスーツがあるのになぜ?って思ったら飛行中目測を誤って高架に激突していたので ふきだしてしまった。もしかして過去にも失敗しておりあまり上手でないという自覚があるの…? ややどん臭い気味のアクション、新鮮でいいと思います。 スーツの防弾機能は優秀でどこまで防げるのか見たくなった(至近距離ライフルとかも防いでたね?)。 コリン・ファレルはどこに出ていた?と思ったらペンギンだった。 あとバリー・コーガンはもっと分からなかった。 ポール・ダノのリドラーは、ああいう人間が本当にそこにいるみたいな超技巧演技だった。 なんか、ヒーローというよりも乙女(ゴードン)と一角獣みたいというか、 ゴッサムの麒麟のようなバットマンでした。 女怪(アルフレッド)に育てられ、清廉潔白な主以外には従わぬ聖獣てきな…。 主が病めば彼も病むし、ゴッサムが病んでもやはり病むのです。ともかく病む。(十二国記ねたです) 最初と終盤で使われるアヴェ・マリアそして予告でも使われた「Something in the Way」はとってもとってもよかったが、 セリーナとのラブっぽいシーンで流れるメロウな曲は、申し訳ないがアホみたいな使い方で、 しかも繰り返されるので、アホなの……?と思った。無音のほうがまだましだ。 蛇足ですが、ヒーロー登場の前座のために虐げられる、弱くて惨めなアジア人男性のシーン、 これがこの先100本続いたらアジア人男性の人にも、 ヒーロー登場の前座のために犯罪被害に遭う女のシーンを100回見て「お前たちはこれに飽きないのか…?」 と聞きたくなる気持ちが分かってもらえるだろうか。 「じゃあハリウッド映画見ずにアジア人の映画を見てろよ」って言われて終了するんですけどね、フフ。 エンドロール後に1シーンあります。 2022.03.13 サイトに掲載 2023.05.07 再掲載 戻る |