「マリグナント 狂暴な悪夢」










「怪物はささやく」のパトリック・ネス原作。
3部作のYA小説を、色々改変して2時間にまとめたようです。
ダグ・リーマン監督。
トム・ホランド主演、ヒロイン役にSWレイ役デイジー・リドリー、
助演にマッツ・ミケルセン。

環境の悪化した地球から、ニューワールドという惑星に移住を開始した、
第一世代の町プレンティスタウン。
この星では思考が映像となって周囲にばら撒かれ、隠し事はできなかった。
先住民族に女性全員を殺され、男しかいない町で
義父2人に育てられたトム・ホランドは、
森の中で墜落した宇宙船と、女性を発見するというあらすじ。

思考が丸見えになる設定と、女性がいないという設定が
SF的に複雑に絡むかなと思ってましたがそうでもなく、
主にちょっとした能力バトルと、ラブコメ的演出に使われた。

馬と犬が好きな人は注意

内容ばれ

原作の13歳ではさすがにないんだろうけど、
トムホ、未成年設定だ。

自らの不満と劣等感を世界に投影するタイプの、
一番リーダーに据えてはいけない人を首長にした悲劇なんでしょうけど
それが一見冷静なマッツ・ミケルセンの顔をしてたらまあ仕方ないかなという気もする。
(「ミスト」の宗教おばさんみたいに他人の恐怖と暴力衝動を煽るのが上手い人)

しっかり煮詰められたSFというよりは大味なやつで、
マッツは「冷凍睡眠から目覚める前に船を乗っ取る」的なことを言ってたが
冷凍睡眠してたら世代交代しなくてヒロイン生まれなくない?とか、
どうやって母船まで行くつもりだったの?とか、
先住民族への物語としての関心のなさ、
(地球に宇宙人が勝手に入植してきて空き地で暮らし始めたら困らない?)
(原作では先住民族と地球入植者の和平を図るようだけど)
あと、殺された女たちの多くが誰かの配偶者だったことが予想されるけど
夫たちの多くは妻の生命より共同体を優先して、妻を殺した共同体で暮らすんだ…とか、
あと川で牧師が犬を殺すシーン、
主人公とヒロインが距離を詰めるのに犬が死ぬ必要があったのは分かりますが
自分も溺れかけたのに無意味に犬を殺して去っていった牧師が、
犬殺し妖怪みたいになっちゃって気の毒だった。
あの川の追跡シーン、まるごと不要でしょ……。
あと犬に比べて、育ての義父への悲嘆のシーンがなさすぎる。超COOOOOOL。

主人公とヒロインは恋愛しなきゃだめ!キスしなきゃだめ!という層の
願望を満たすには有効の「脳内キス」(しかも相手には丸見えで、怒られるやつ)。
でも生まれてから一度も女子を見てないのに、
いい雰囲気になったらキスしたい!というビジョンがあるのは不思議だ。
(彼は過去の記録データの学習が難しい事情がある)












2021.11.15 サイトに掲載

2022.05.08 再掲載





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