「キャンディマン」










1992年のホラー映画の続編。
しかし大変上手につながっているので前作を見ておく必要は特にない。
ジョーダン・ピール脚本で、
「ゲット・アウト」よりも苛烈でストレートな人種差別ホラーになっている。
もはやこれは負のブラックパンサーだなと思った。
映画で受けた衝撃を、実生活に持ち帰らせるという点でとても優れている。

アートディレクターの主人公は、恋人の画家を家に住まわせて
彼の活動を支援していた。寡作の画家は次のテーマを
カブリーニ=グリーン地区のキャンディマン伝説に決定して取材を始める。
しかし彼の周辺で不審な殺人が起こり始め……というあらすじ。

虫が駄目な人と、集合体恐怖症のひとは少々厳しいかも。

内容ばれ

最初のシーンからエンディングまでずっと
「殺された同胞と同じ数だけお前たちを殺してやる」という叫びに満ちている。
自国を出ずに暮らし人種差別を経験していない黄色人種の私でもヒッって思ったので
当事者である2つの人種の動揺はどれほどだったろう。
無印キャンディマンは恨みを残した人物が怪異となり
その怪異は継承されるというスタンダードな話だったが
今回は差別弾圧を受けている属性の者たち全員がキャンディマンになりうるし、
虐待される属性の者たちはキャンディマンを待ち望むという話だった。
魔王的な人物はよく「光ある限り闇は何度でも蘇る。ぐふ」とか言って絶命するが、
「差別がある限りキャンディマンは存在する」という設定だと、
消滅させられる気が全然しない。

しかし恨みや執着を残した死者が怪異となって思いを遂げるというのは
元は西洋より東洋に多い物語のパターンだと思うが
(欧米の古い怪談は、ただ出てくるタイプのものが多い)
このアイディアがこっちで出なかったのは惜しい。
性暴力が原因で自殺した女性、ストーカーに殺された女性、
DVで死んだ妻、性加害目的で殺された女児、その恨みの集合体の怪異が
女性から女性に受け継がれるホラー・ダークヒーローものがあったら、
それを見た男女は平静でいられただろうか。
(そしてこの映画ほどドライな感じに撮れただろうか)

冒頭の反転MGM、なんだかもぞもぞした。
そういえば鏡像なら見えるって設定は、後付けだよね…?









2021.10.17 サイトに掲載

2022.05.08 再掲載





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