「ファーザー」 認知症を患った父と介護する娘を、 父の視点から描いた作品。 本作で父を演じたアンソニー・ホプキンス氏が アカデミー主演男優賞をとりました。 見るおつもりのかたは前情報などなしにご覧になるのがよいです。 男性と女性、若い人と若くない人、 老人と接したことのない人と介護経験者で全然感想が違うと思います。 高齢者と接点がない人にはショックかも。 内容ばれですが、娘がさっき言ったことと全然違うことを話す、 知らない人が家にいる、いつの間にか自分の家でない所に居る、 私物を盗まれた気がする、突然理不尽な暴力をふるわれる。 成程、認識能力が正常に働かなくなると、 こういう世界に生きることになるんだろうなと思いました。 オチばれ 娘に捨てられる父親の悲哀を、もしかすると男性は読み取るのかもしれませんが、 アンソニーはかなり幸福な認知症患者だと思う。 自己犠牲的と言ってもいい熱心さで介護してくれる娘 (出掛けているときに父がセーターをうまく着られない件で呼び戻されて ちゃんと戻ってきて怒らず着せてくれるんですよ)、 何の収入によるものかは分からないが裕福な経済事情、 清潔に整えられた衣服と環境、 忙しいだろうに優しくヨシヨシしてくれる綺麗な看護師さんたち。 でも高齢者の周囲の女性視線で見ると、かなりつらい。 高齢男性にありがちな男尊女卑が遠慮なくぶつけられるし、 頭が悪いとか、母親に似たとか、愛想がないとか、お前の妹はかわいかったとか、 他人に言われたなら聞き流せても肉親に言われるのはきついだろう。 あと以前地位の高かった、仕事のできた人ほど、 お前が間違ってる!お前のミスだ!お前はバカだ!ってなる気がする。 完全な時系列シャッフルではなく、現在のパリ行きの話を 過去のシーンで尋ねたりしているので、タイムラインは混乱している。 なのであまり時間特定に意味はないけど、 目印としてキッチンの壁の模様とかは分かりやすかった。 認知症がテーマのエンタテインメント映画と言えば 「手紙は憶えている」(サスペンス)ですけど、 あれの主人公はすごかったなあ…私なら なんも分からん。なんもできん…無理…ってなってるところですよ。 2021.06.04 サイトに掲載 2022.05.08 再掲載 戻る |