「ノマドランド 」










資産を失った高齢の車上生活者たちに関する
ジェシカ・ブルーダーのノンフィクションを、
クロエ・ジャオ監督が映画化。
フランシス・マクドーマンド主演。

主人公はかつてネバダ州の街で夫と暮らしていたが彼と死別し、
巨大な工場が閉鎖になり、街もなくなってしまう。
新しい家を持つのが忍びなく、
彼女はキャンピングカーで暮らし始める…というあらすじ。

貧困と老いを描く系の話を予想して相応のダメージを覚悟してたのですが、
そうではなく、家を持ってそこに定住する人もいればそうでない人もいて、
そういう人たちの視界には空と地平があって、
時には奇跡のような光景を目にし、その代償に孤独と共に暮らす、
という内容だった。
(Amazonの非人道的な労働環境に対する批判性の欠如を
非難されたりもしておるそうですが)
違う生き方の提示というか。

内容ばれ

フランシス・マクドーマンドを見に行ったのですが、
でっかい風景に負けない獣のような存在感と、
詩の朗読のシーンでスッと声質を変えなさるような
繊細な演技もなさってて好きですね。
「許されざる者」男女逆転版とか見てみたいです。
あ、シェイクスピア男女逆転でもよい。

主人公たち、たしかにお金はないんだけども、元々貧困層という訳ではなく、
メインキャラクターには迎えてくれる家がある。
季節労働は少し楽しそうですらあった。
(Amazonの仕分け作業、相当な重労働の上、
急病人が出ても権限のないものは救急車を呼んではいけない規約になっており、
死者が出たというルポを読んだが、たしかにこの映画ではそういう点は描かれない)
メインキャラクター以外の人は役者さんではなく、
実際のノマドの方々なのだそう。(スタッフロールの役名と実名が同じ)

映画の中のあのノマドの女性のように見たかった光景を見て、
仲間たちに悼まれてこの世を去る人生と比べて
家に定住して子や孫を成して亡くなる人生のほうが幸せで真っ当だとは
私には思えないです(まあでも後者のほうが優れてるに決まっとるだろうが!
というかたも多くいらっしゃるだろう)

しかし知っている筈なのにアメリカの巨大さには何度でもびっくりしてしまう。
そして主人公がスペアタイヤを詰んでなかったシーンにぞーっとする。
間が悪ければ普通に死んでた。そういうデメリットも勿論ある。

有色人種がほぼいなくてどうして?と思ったけど
有色人種が車上生活をするとすぐに警察に職務質問されるので、
必然的にノマドは白色人種の女性が多いのだそう。
女性の多さについては、家庭での労働搾取による給与格差によるものらしいですが
こちらの記事が分かりやすかった。
https://www.cinematoday.jp/news/N0122380

新年の面白カチューシャを付けて1人で花火をして祝うシーン、
あれを実際やったら心が折れる人とそうでもない人に分かれる気がするが、
私はまったく平気でむしろヒャー!楽しー!ってなるほうなので、
この映画の受け止め方もポジティブなんだと思う。

貧困による車上暮らしは世界的に増えているという記事は
なにかで読んだことがあります。
ファスベンダーさんの主演していた「アウトサイダーズ」は
英国の車上暮らしの人々が、数世紀前の村落のような生活を送る
(父息子愛の)映画でした。
アメリカのドラマで、路駐した自分の車を格安ホテルとして
貸し出しているのも見た。
地価の異常な高騰が根底にあるのでしょう。
日本の車上暮らしガイドをちらっと見てみましたが、
本州以南では夏を越すのが難しいそうで、そりゃあそうねと思いました。
アジアではちょっとハードだよね。

貨幣経済、資本主義は限界に近付きつつある、
というようなセリフが心に残りました。











2021.03.30 サイトに掲載

2022.05.08 再掲載





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