「ジェニーの記憶」










仕事も充実して恋人との生活も安定している48歳の女性が
母親から子供のころに書いた作文の件で連絡を受ける。
作文の内容は少女が離婚歴のある成人男性と付き合うという内容で
これが本当ならあなたは虐待を受けたと訴える母親に
自分は大人びていたので、あの関係は完全に対等な男女のものだったと
主人公は反論するが…というあらすじ。

監督の実体験がもとになった作品。
エンタテインメント作品かというとちょっと違う気もするが、
小さな娘さんのおられる親御さんは見ておかれるといいかもしれない。
(見ると非常にどんよりしますけど…)

家庭や環境に対して不満のある小さな子が
君は特別だ、他の子とは違う、
美しい、深みがある、才能があるって褒められ続けたらどうなるでしょう。
その容姿や声や、作品や運動能力を褒められたら?
そして君の周囲にいる大人は君の事を理解できない。
でも僕は分かるって言われたら。
もう周囲の、本当に自分を大事に思っている大人の言葉なんか
聞かなくなるのではないでしょうか。

ラストばれ

主人公は最後のほうまで
「13歳の自分と彼とは対等で、むしろ自分のほうが優位だった。児童虐待ではない」
って思ってるんですけど、彼が他の複数の児童にも手を出していたことを知り
とうとう自分は性虐待を受けたのだと認識します。

実の母親から
「楽しんでたの?」
「なぜやめなかったの?」
って聞かれる地獄。

少女時代の主人公はその後、妻帯者でも誰でも見境なしに男性と付き合うようになり
現在は落ち着いているが子供は絶対に持ちたくないと考えている。
その生き方が子供のころの性虐待のせいなのか、それとも違うのかなんて
誰にも、本人ですら分からない。
人生を破壊されたのかもしれないし、そうでないかもしれない。

乗馬の先生を演じたエリザベス・デビッキが美しかった。
支配力のある男性の周りに、女性たちがハーレムのような組織を形成して、
その女性が未成年の少女を集めるのに協力する性犯罪、
世界中に例があります。日本でもある。
こうなってくると女児童を性犯罪から完全に守るのは無理ではないか、
運次第ではないかという気もしてくる。
そして少女との恋愛願望のある男性にとっては
この映画は、少女を導き、性について教えて心から愛するが
やがて少女に捨てられる哀れな男の愛の物語なんだろうなと思う。
最後のは瑞々しい感性を失ったオバサンが
ヒステリーを起こしてるように見えるのだろう。

ラストの展開はちょっととってつけたようだった。
いや別に叩きのめしてスカっとしたいとかではないが、
もうちょっとなんかこう…。










2020.09.08 サイトに掲載

2021.05.05 再掲載





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