「けむりの軍団」










ゲキシネ上演。
脚本は倉持裕さん。

賭場での寺銭持ち逃げ騒動に巻き込まれた、元軍配士の浪人が、
金と下手人を揃って5日以内に連れ帰らねばお前の子分を殺すと脅され、男を追う。
一方、大名の目良家では、婚姻に寄る同盟を破って攻め込んだ目良に対して、
姫を取り戻し即刻応戦しようとする厚見家の家臣たちが城への潜入を果たしていた…
というあらすじ。
「走れメロス」と「隠し砦の三悪人」を合体したような話がいいという、いのうえさんのオーダーに
ちゃんと沿った形の脚本です。

相変わらず早乙女さんの殺陣はキレキレ。
目良家を統率する高田さんの極悪非道ぶりには華がありました。
第二勢力の夭願寺住職を演じる粟根さん、
袈裟の翻りまで計算に入れたアクション、お若い頃よりむしろ色気が増されたような。
池田さん、スナフキンと白石(金カム)を足して割ったような飄々とした役どころ、
お声が美しかった。古田さんとの掛け合いの息もばっちり合ってました。
姫役の方は、蹴りが結麗だった。この物語の良心なので、
時々救われたような心境になった。
冠さんは楽曲のみの参加。あのシャウトを聴くと寿命が延びる気がします。
古田さんは、十八番の役柄。適当で下品で狡いところもある流れ者だけれど
膨着した状況の破壊者。
芝居を支えるキャラクターに足る存在感(ただちょっと、 殺陣の時「体幹…」って思ったけど)

内容ばれ
前の「乱鷲」のときも思いましたが、
倉持さんは中島さんの新感線風の脚本を書かれるのがすごく上手い。
たぶん器用なかたなんだと思う。
中島さんのお芝居から、灰汁と言葉のリズム感とカオスを抜いた感じ。
きれいなジャイアンみたいな。
なので整って飲み込みやすい話を好む人は倉持さんの本のほうが好きかも。
ただ時々、倫理がゆらぐことがあるのが気になるんですが、
今回も皆殺しが起承転結の中でラッキーに位置付けられたのが「ンー!?」って感じました。
あそこ十兵衛の機転と詭弁で切り抜けるか、
あるいは行きがかり上、一家を助けた形になって放免されてたらよかったんだけども。
だってあの一家、皆殺しにされるほど悪い事はしてなかったし、
メロスが帰ってきたら革命が起こってて、王をはじめ一族郎党全員斬首されてたら、
あんまりヤッターって感じにならないじゃない…。

最後の紅葉の演出は美しかったです。
いつか、絶望的に口下手で天才的な剣士の新しい物語が語られるといいですね。

新感線は随分昔からグキシネというサービスを定着させてきたけど、
舞台の予定が立てられない現在のこの状態で、劇場公開が命綱になっているといいなと思う。










2020.07.13 サイトに掲載

2021.05.05 再掲載





戻る