「透明人間」










リー・ワネル監督脚本。
本当なら、おトムの「ミイラ男(ザ・マミー)」と世界を共有する
ダークユニバースになる予定だったが、1作目からコケたので
白紙に返ったところをリー・ワネルが引き受けて本を書いた。
リー・ワネルは学生時代に出会ったジェームズ・ワンとコンビになり
2人で撮ったホラー映画「SAW」がハチャメチャヒットした監督・脚本家・俳優。
今回も、透明人間という、ちょっとダサめに感じられるテーマを
「なるほど、そうきたか!」という設定で固めてあって面白かった。
(個人的にはまたジェームズ・ワンと組んでホラー撮ってほしい)
ホラー、サスペンス好きな人におすすめします!特に女性。

主人公の女性は、一緒に暮らす恋人からのモラルハランスメントに苦しんでいた。
ある日、意を決して恋人に薬を盛り、逃亡に成功する。
加害されない生活を手に入れ、安らかに暮らしていた主人公は
恋人が自殺したことをニュースで知る。研究者だった恋人の遺産は5億円。
それらはすべて主人公に残されており、
相続の条件は犯罪者ではないこと、精神が健常であること。
しかし主人公の身の回りで不可解な出来事が起こり始め、
彼女はそれを恋人の仕業ではないかと疑う、というあらすじ。

透明なモラハラ彼氏なのか、それとも加害を耐え続けた主人公が心を病んだのか
あるいは遺産狙いの誰かが仕組んでいるのか、序盤は分からないようになっていて、
それがとてもよかった。

犬は無事!
大きい音でビックリさせるシーンが序盤に1回だけあります。
ただ集合体恐怖症のひとは、ちょっときついかも。
モラハラがテーマなので、恐怖症の方は無理です。

ラスト含む色々ばれ

オープニングの主人公の異常な怯え方で、
この家で何が行われていたかが分かるスマートな導入部。
ゼウスの皿を蹴飛ばしたシーンで久しぶりにビクッとしました。
最初から最後まで、こわいのは透明人間ではなく、モラハラでありDVなんですよね実は。
なので親族や協力者が心変わりしたり信じてくれなくなったり
(実際はもうちょっと巧妙に不和を煽るようですが)
匿ってくれる身内が殺されたりするのはリアルでぞっとしました。

ドラマ「ハンドメイズ・テイル」でも、
男性からの虐待と女性蔑視に耐える妊婦を演じた主演のエリザベス・モスですが、
この人の上目遣いはちょっと気の違ったニュアンスもあって絶品です。
今回のテーマにかぶせたキャスティングなんでしょう。

「サプライズ」のひとことで、確信を得てからの復讐が鮮やかでスッキリした!
ちゃんと伏線が回収されたし、妹を殺されたのと同じやりかただもんね。
(スーツ内の痕跡で兄に罪をなすりつける必要があって、スーツの中身は始終一貫して兄だったと私は思ってる)
(ただし兄はもう自分の意思とかはなく、何でも弟の言いなり)
互いのきょうだいを殺して一騎打ちからの勝利!
やっぱりずっとホラー界にいるひとのホラーは、鮨屋の鮨くらい安定している。

光学迷彩スーツ、めちゃ燃えました。
あれ各々カメラの周囲がスクリーンで、前後と左右の風景を逆転して映写するんだろうけど、
視点の角度があるから、床上1センチのところに床上1センチの視点からの映像が写ってたら
相当変な気がする…。
それとも人の視点の高さを自動で感知して、1m60あたりのカメラの映像を全体に映写するんだろうか。
その場合、前面に立ってる人と寝そべっている人がいたら、どうするんだろう…とか色々考えた。
パワードスーツを兼ねてるみたいだから、思いっきり軍用だな。

さて映画とは関係ない蛇足ですが
モラハラとかよく知らないし、周囲にもないという人に書きます。
私の知人女性は、夜中に起きていたら、たまたま起きてきた男性に
家出をすると勘違いされて殴られ、頭部のパーツが1つ損壊しましたが
もちろん警察に通報とかはなさってません。暗数が多い。あと加害者は男性ばかりとも限らない。
モラハラ加害者とは円満に別れられないので、失踪による解決が多い。
なのでもし「もっとよく話し合うべきでは?」「相手をそんな風にレッテル貼りするのは失礼」と思っても
そう助言したり、ましてや連絡先を教えて失踪者追跡を応援しないほうがいいです。
あと被害者をかくまって巻き添えで暴力を受けたりするケースもあるのでそこは注意。

モラハラ被害は、本人が気付くのは結構難しいですが
「最近なんか自分に自信がなくなってきたな…」とか、
「最近なんか友達や知人が減ってきたな…」とか、ふと思ったら自分の交友関係を精査してみてください。

あとこの映画を見て「どっちもどっち」「愛情がすれ違っただけ」
って思った男性や女性は、特に自覚がない場合はモラルハランスメントについて
ちょっと学習してみるといいかもしれないけど、
「くだらないことでギャーピー騒ぎやがって!」と腹立って終わるだけかも…分からん。









2020.07.12 サイトに掲載

2021.05.05 再掲載





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