「ミッドサマー」










「ヘレディタリ― 継承」のアリ・アスター監督2作目。
公開前からネット上で話題になっていました。
前日にチケットを取りましたが最前列しか空きがなかった。
結局朝から夕方まで満席だったようです。大人気でなにより。

最近身内に不幸があって不安定な女性が、
彼氏のフィールドワークに同行してスウェーデンの田舎の
小さな共同体を訪ねるが、
そこでは90年に一度の祝祭が行われていて…というあらすじ。

ホラー文脈で撮られていないので、
ホラー映画かどうか微妙なところですが、
白夜でずっと明るい中、人間の中身がバッチリ映るので
苦手なひとは見ない方がよろしいでしょう。
あと精神が不安定なひとはやめておいたほうがいいかもしれない。

青空、白い衣装、白人、臓物、花、花、花で、どんなシーンも美しかった。
これで30代前半とか、アリ・アスター監督の化け方がすごい。

内容ばれ

アリ・アスター監督の好ましいところは
意外と人間の理性への信頼を感じとれる部分。
ホラー映画でよくある、「そんな簡単にパニックになる!?」「そんなバカなことする!?」
っていうのがあまりない。(立ち小便はトイレでやれって思ったけど)
この映画でも、判断が揺らぐ必要のあるところは全部、薬物で補完してた。
一方、登場人物に理性があるので、
男ばかりでやんちゃする予定が、メンバーの中の1人の
精神状態が健康でない彼女がついてきても表立っては非難しないし、
論文のテーマをパクられても共同研究に落とし込もうとするなど、
じわじわと嫌な感じになる。

あと意地の悪いギャグセンス。
彼氏が少女と性行為をするところ、中年女性が参加してきて(少女のお母さんかな?)
彼氏くんが「えっ!?」ってなった瞬間笑ったし、
老女がピストンの介錯を始めたところは笑うのをこらえた。

血の鷲による死体を2回も見ることになるとは(ドラマ版ハンニバルで見た)。
頭部損壊は「ハウス・ジャック・ビルト」と並ぶ出来でした。

異なる倫理を持つ共同体に侵入した人物が酷い目に遭うプロット、
古くは「ウィッカーマン」、近年では「グリーン・インフェルノ」
それプラス
心を病んで、邪悪なものに身内を捧げようとするひと、というプロット
それは監督の前作「ヘレディタリー」や、「シャイニング」、なんですけど、
この映画の特異な点は、異様な共同体、邪悪なものを
暗闇やショッキングな音楽、凶悪な表情の加害者、逃げて泣き叫ぶ被害者、
等といった演出を用いず、むしろ神秘的で美しく、
主人公が潜在的に求めていた存在のように描いたところです。
骨や臓物がまろび出ますが、もともと私たちの中に普通にあるものだし、
袋の外に出た途端にワーキャー言うのって変じゃない?
あなたの属する世界は、あなたの苦悩や悲哀に完璧に寄り添ってくれる?
寂しいあなたを満たしてくれる?と優しい笑顔で問いかけてくる感じ。
前作のペイモンはまだ恐怖の対象だったけど、今回はこれで、次回はどうなるんだろう。

精神が不安定なひとは、びっくりするくらい速やかに新興宗教に吸われて帰ってこないし、
あとこちらに不幸があるとどこからか情報を得て、ス…と寄り添ってきてくださるのを
なんとなく思い出しました。

余談ですが、あらすじを絵画化したやつのウィル・ポールターくんが
似すぎていて笑ったんですけど、彼はまあ眉毛が本体というところがあるので
絵に描きやすいのかも。
というかウィル・ポールターくん、
ホラー映画の殺される人をやるクラスの役者ではないのでは!?
どうしても出たかったの!?

もうひとつ余談、始祖ユミルの名前が出て、
北欧神話ベースの信仰なのかな?実際にそういう新興宗教が?って思って
検索したら進撃の巨人しか出てこなかった。だよね。



予告
https://www.youtube.com/watch?v=91zwL-ak9AM










2020.02.23 サイトに掲載

2021.05.05 再掲載





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