「フォードvsフェラーリ」 フェラーリ買収を土壇場で蹴られ、さらに侮辱を受けたフォードは、 相手の得意とするレース界でフェラーリを打ち負かすと決意し、 ル・マン24時間レースに勝利するべく、 キャロル・シェルビー率いる製造チームを雇う、というあらすじ。 「ニューヨークの恋人」「ナイト&デイ」「LOGAN/ローガン」ほか、 ラブロマンスからコメディ、サイコサスペンス、トンデモアメコミ、 重厚なヒーローものまでジャンルに合わせて最良の作品をきっちり仕上げる ジェームズ・マンゴールド監督なので今回も間違いなかったです。 「フォードvsフェラーリ」というタイトルにはなってますが、 主要登場人物はフェラーリのことをあまり意識しておらず、 物を作る側の人間と、物を売る側の人間の対立、 車に情熱を燃やす人間とそれが理解できない人間、 あるいはシェルビーと、変わりものの英国ドライバーマイルズの友情の話でした。 タイトルは「シェルビー&マイルズ」としたほうが、内容には合っているように思う。 (知名度の点で無理だろうけど) マイルズに寄った脚本になっており、演じたクリスチャン・ベールは絶賛されています。 またものすごい痩せて、顔は汚し加工されており(メイクならいいんですけどたぶん日で焼いた) ちょっとは体大事にしなよ…という感じ。 しかし家族を愛しているがスピードにとり憑かれている天才ドライバー、 見る者を悲しい気持ちにさせるほど人間に対しては不器用、 というマイルズのキャラクターにぴったりでした。 ラストばれ 結果がどうなるかは全然知りませんでしたが、 クリスチャン・ベールの演技で、この人は(この映画内では)長くは生きないだろう、 というのが伝わってきました。 ちょっと上を向いて視線は前方に据える角度、あれをやると目に光が入って いつもより温かみのある印象になりますね。 これまでに見たクリスチャン・ベールのなかで一番人の心のある顔だった。 ちょっとリスザルに似てました。 日給200ドルの話を奥さんとするシーンとか特に。 夜にコースを歩いてみようとするマイルズが少し高揚していて ふざけて喝采に応える仕草をするのに笑うシェルビーとか、 「H-A-P-P-Yわぁーい」の歌とか、 取っ組み合いの喧嘩の場面とか、細やかな脚本でした。 けなげな子供と妻が「愛してる」を連発して 優しい父が死んで音楽が盛り上がって登場人物が叫んで大泣きなのを そのまま垂れ流す醜い脚本に比べると それこそ優美なレーシングカーのような繊細さ。 (特定の邦画に対するdisではありません) マット・デイモン演じるシェルビーのほうは 天才を俗世から守りつつ橋渡しをするという役割で どうしても割を食ってしまうポジションでしたが、 それでも主演の存在感を残したのはさすがでした。 2020.01.12 サイトに掲載 2021.04.30 再掲載 戻る |