「ロケットマン」 類まれな音楽の才能を持って生まれたが、 両親からの愛情は得られなかった英国の少年が、 やがて一生のパートナーとなる作詞家と出会い、 世の耳目を集め一気にスーパースターとなり、 自らのセクシャリティに気付き、 やがてプレッシャーと疲労から薬と酒とあらゆる依存症に陥り、 危ういところまで転落するが、自己と向き合い、立ち直っていく、 エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル。 監督は、「ボヘミアン・ラプソディ」を シンガー監督からバトンタッチして仕上げたデクスター・フレッチャー。 このかたマシュー・ヴォーン映画の常連役者さんで、 なおかつ「イーグル・ジャンプ」で 監督として今回の主演タロン・エジャトンと仕事してらっしゃる。 「ボヘミアン・ラプソディ」と比較されることが多いですが、 こちらのほうがミュージカル要素が強い。 あと、舞台に立つのも曲を作るのも、 彼は1人でグループではないので、 つらいシーンはこちらのほうがきつい。 こちらの映画のほうが心の問題の扱いが大きい。 歌も担当するタロン・エジャトンが、はちゃめちゃに上手い。 「Sing」ですでに披露済みだけど、高音もスローな曲も 本職のような安定した歌声だった。 あとものすごく美しくて悪い魔性のゲイが出てくるので そういうの好きな方におすすめ。枕で世界を操る男。 ラストばれ 本当の愛と出会えてエルトンは幸せになりました! というところにフォーカスしなかったのが、結末の肝だと思う。 ありのままの自分に、完璧な愛情を与えてほしい、 愛してほしい、愛してほしい、愛してほしい、という 与える発想のまったくない飢餓状態の人がいたとして、 その人物をエルトンは、愛せたかと言うと答えはNOだろうし、 大抵の人間はそうだろう。 まずは自分を愛して抱きしめるところがスタートラインで、 他人を愛して、愛される関係になるのは次の段階なのだ。 ジェイミー・ベル演じるバーニー・トーピンがとても良かった。 出会って意気投合して、喋って喋って喋り倒して、 2人の背景の空の色で時間がものすごく経過しているのが分かって、 「オフ会で魂の双子に会ったオタクやん…」と思いました。 2人の共作が魔法のように完成していく様子は、 ボヘミアン・ラプソディ作曲のくだりや 「ジャージー・ボーイズ」の作曲のくだりを思い出した。 そして完全な愛情を求めるエルトンに対して あくまで自立した大人同士の友情を要求した バーニーはとても強かった。 タロンさんは全シーン丁寧に演じてらっしゃったけど ゲソゲソのボコボコになった表情から、 薬をキメてニカッって笑うところがやばかったです。 そういえば本人に寄せるためか前歯がスキッ歯になってたけど、 あれは歯の表面に何か貼ってあったのだろうか。 ジョン・リードは、ヴィランのような描きかたですが まあたぶん彼視点にすると違った事実も出てくるのでしょう。 彼はエルトンと破局したあと、ビジネスは続けながら クイーンのフレディとよろしくやって、上手くいくかに見えたけど、 魔性のゲイその2に蹴落とされるという末路が待っています。 この映画のマッデンさん演じるジョン・リードと、 「ボヘミアン・ラプソディ」に登場するジョン・リード、 それとご本人様の写真を見比べると面白いです。 ただちょっと他の人への丁寧な描写に比べて 奥さんへの扱いがあまりに雑で、 彼女だけ3分間クッキングだったのは気になった。 セラピーシーンにも出てこなかったし。 ほかにも省略されている人物がいるのだし、 彼女も省略してよかったのでは…。 「キングスマン2 ゴールデン・サークル」で 今回の主演タロン・エジャトンとエルトン・ジョンが共演してらっしゃるので、 興味のある未見の人は見てみるといいでしょう。 2019.08.26 サイトに掲載 2020.01.01 再掲載 戻る |