「キューブリックに愛された男」










アレックス・インファセッリ 監督
お得なコンビ前売券を買ったので、
「キューブリックに愛された男」
「キューブリックに魅せられた男」
を連続で見ました。
「愛された男」のほうは監督の運転手を約30年務めた
イタリア系移民の男性の話。
「魅せられた男」は監督に惚れこんで役者を廃業し
約30年彼のアシスタントを務めた男性の話。

過去作品の撮影風景が見られるのも、
天才の残酷さが垣間見られるのも断然「魅せられた男」のほうなので、
キューブリックファンがどちらか見るなら「魅せられた男」のほうですが、
対称的な内容のドキュメンタリーなので、比べながら見るのは面白いです。

1970年、タクシードライバーだったエミリオ・ダレッサンドロさんは
映画会社の依頼で、雪の夜にある大道具を運ぶが
それは「時計じかけのオレンジ」の例の巨大なアレで、
彼はそれがきっかけでキューブリック監督に気に入られ、
長い期間彼の運転手を務める事になります。

彼はキューブリックの映画を1本も見た事がなくて
仕事を引退するまでとうとう見ないままだった。
でもそれが幸いして、監督と
人間同士の付き合いができたのではないかと思います。
キューブリック監督には、人懐こくて思いやりのある面「も」ある。
そちら側を描いたドキュメンタリーでした。

ラストばれ

故郷に帰るエミリオさんが別れの挨拶を述べようとすると
半泣きで「やめろバカ!」ってさえぎったり、
イタリアに帰るとすぐに電話をかけてきてくれたり、
映画に出させてくれて、
トムクルーズをはじめとする並居るスターの前で
妻共々丁寧に扱ってくれたり、
ホンワカエピソードの連続でした。
亡くなる直前に過労で弱って、
「猫に飲ませる錠剤がうまく割れない」
って言っていたという(監督は超愛猫家)監督の話は、
すごく生々しかった。

ラストもよかった。
一番好きな作品は「スパルタカス」ですって言ったら
監督が嫌な顔した話。
そういう、映画監督にとって異種族であるエミリオさんだからこそ、
むしろ礼節を持って接したのだと思う。
「キューブリックに魅せられた男」を見てそう思った。












2019.11.19 サイトに掲載

2020.01.01 再掲載





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