「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」










タランティーノ監督新作。
ディカプリオとブラッド・ピットの初共演で話題になりました。

やや盛りを過ぎたTVスター、リック・ダルトンは
最近主役ではなく悪役のオファーが増え始め、
見下しているマカロニウェスタンへの出演打診が来たので落ち込み気味だった。
そんな彼専属のスタントマン兼運転手で友人でもあるクリフは、
不安定なリックの世話を焼き、励ましてやるのだった。
ビバリーヒルズ北部の高級住宅街に居を構えるリックの新しい隣人は、
最近脚光を浴びている若手監督のロマン・ポランスキー。
そして彼の美しい妻シャロン・テートだった…というあらすじ。

シャロン・テート事件を知っていること前提で撮られているので、
「なんそれ?」というかたは、ざっと事件のあらましを読んでから
見るのをおすすめします(猟奇的事件なので注意)
終盤でタラちゃんのいつもの悪趣味と暴力がガンガンきますが、
何だか今回は不思議と優しい、ちょっともの悲しさもあるお話でした。
それと1960年代のファッションかわいい。

ディカプリオとブラッド・ピットのキャラクター、
どっちも性格造形がよかった。

オチを書きます

前半で「下見」に来たりとか、
事件当日から徐々にナレーションが増え、
時間表示も出てドキュメンタリーっぽくなり、
ああこれめちゃくちゃ残虐なシーンで終わるわ!
リックかクリフかどっちかが巻き添えで殺されるわ!…って思ってたら
3人がリックの家に来た時の驚愕!
エエエエー!!隣の家に来ちゃうの!?隣だよ!?
それで?やっつけちゃうの!?丸焼き!?睾丸をそんな!?
ヒエエエエエェェェェ!!!っていう衝撃のラストでした。

歴史上の異常な犯罪、悲惨な事件をなぞる作品、
例えば「ゾディアック」や「サマー・オブ・サム」「デトロイト」
「アメリカン・アニマルズ」「スポットライト」「ルーム」、
終盤まではそういう映画のふりをしてお澄まし重厚してるんですが
ラストでその皮を脱ぎ捨て、僕の考えたさいきょうのだーくひーろーが
かわゆい天使みたいなおんなのこをすくう映画になります。
タラちゃん才能にあふれた12歳男児なの?
優しい話じゃないのどうしたの!と思うけど、
男女平等パンチ(顔面潰し&バーベキュー)がやりたかった
12歳なのかも(笑)分かりません。
(過去作も人面にナイフで落書きしたかった12歳なのかもだし)

最初から歴史改変、IFものの映画はありますが、
ラストで突然改変ものになる映画ってありそうでない。
私は他の作品を思いつきません。

リックとクリフの関係は非常に面白く、小説になりそうです。
(兄弟以上妻未満…って言っちゃった…)
リックの高慢で意志が弱く不安定で、でも演技には真摯なところ、
クリフの気さくだけど底が知れなくて、ぞっとするほど支配的なところ。
そして彼は妻を殺していると私は思う。
それでバームクーヘンエンドかつ死別ってさあ…って思ってたら違った!

箇条書き

・クリフが未成年との性行為を断る所は
 ポランスキー監督への皮肉かなって思いました。
 あとリックが演技のヒントとしてマクベスかハムレット?の話をしてましたが、
 これも監督が事件翌年に撮った「マクベス」への目くばせでしょうか。
 (この「マクベス」が怖くて、もうちょっとお休みされたほうが…という感じ)
・スパーン映画牧場のことは知らなかった。
・ブルース・リーの娘である女優シャノン・リーさんが、
 父親の描きかたについて不快であると意思表明なさいました。
 監督はある程度事実であると反論。
 「キル・ビル」でのリーのスーツとか、リスペクト精神はあると思いますが
 そんなこと知らない人だっているし、
 実在の人物を噛ませ犬にしたらアカン…とは思った。
・12歳児って書いたのと矛盾しますが、
 タランティーノ監督が反体制側の無法者視点ではなく、
 持てる者側(脱落しかけてはいるが)から撮ったのって感慨深い。
・シャロンが劇場で観ていた映画「サイレンサー第4弾/破壊部隊 」、
 いくら昔の映画でもあんな雑なパンチラがあるかよ!って思ってたら、
 実際の映像にほぼ忠実でした…50年前のパンチラ雑だ…そしてぱんつが大きい。
・監督、しみじみと女性の足が好きなんだな…。










2019.09.02 サイトに掲載

2020.01.01 再掲載





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