「バイス」









ジョージ・W・ブッシュ大統領の下で
副大統領を務めたディック・チェイニーの、
青年時代から主な政治活動の履歴、
副大統領時代を経て晩年までを描いた映画。

予告ではもっと軽妙な、
テンションの高いブラックジョーク映画に見えたけど、
副大統領がヤバヤバのヤバだったので、重めだった。
夫婦愛、家族愛で加糖してあった印象。

マイケル・ムーア監督の演出方法に所々似てたので
ファンなのかな?と思った。

主演はクリスチャン・ベール。
もともと深淵のような、人の心の無い目をなさっていて、
それを顔のパーツのどこかが補って
寡黙で誠実な男の役などもなさっているが、
今回特殊メイクでそのどこかのパーツが隠れて、
完全に人の心の無い男の顔と演技だった。
というかクリスチャン・ベールって事前に分かってないと
気付かなかったと思う。
演説が下手な演技が巧かった(笑)
ブッシュ大統領を演じたサム・ロクウェルさんも寄せ方が巧かった。
目を細めて口をちょっと開いて間を開けたあと
トンチンカンなことを言うアホの演技が。

ラストばれ

あの状況ですぐに利権と緊急時の権力掌握について
考えられたのなら、彼はデビルマンだと言える。
最終的にティーカップは
倒れたというような表現ではあったけど、
敗北したのは彼ではないし、
彼はチャンスを逃さずにうまくやって、
富を得て悠々自適の人生を送っている勝者なのでは。
(心臓の件と誤射の件は知らなかったので驚いた)
(被害者が公式に謝罪するってどの国でもあるんだなあ…)

実際はどうか分からないけど、
妻と娘への愛情は本物で、
それは政治生命より優先されたという表現は
映画的には救いになった。
奥さんは金髪ワイフ人形ではなく、
今風の優秀で弁も立つが、
女だから経営者にも政治家にもなれない(1963年)。
だから男のお前が必要なんだよしっかりしろやクズが!
てきな女性でした。
しかしあんなクズが5年で、
寡黙で用心深い一人前の男になったのは
ちょっと不思議だった。
そんな奥さんでもDV父に
「二度と私と娘に近付くな」とは言えず
「二度と妻と娘に近付くな」と
夫に言ってもらわなくてはならないのは
時代だなと思ったけど。

長い労働時間で拘束しておけば
国民は政治について考える余力などなくなり、
そして集団の意見は金で(優秀なロビィストを雇って)
ある程度コントロールできる、という部分などは
覚えがありすぎて震えるんですけど
自分の思想が急激に変ってないか
常にチェックは必要だなと思いました。
当時の倫理観では善でも、
のちに検証されると悪になる考えって
山ほどありますからね。

ワイスピさんへの突然のdis。
それにしても南部の人々(またはトランプ大統領支持者)、
どの映画でも物凄い扱いだけど、どう考えておられるんだろう。
いや、リベラルっぽい映画は見ないんだろうか。










2019.04.08 サイトに掲載

2020.01.01 再掲載





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