「ブラック・クランズマン」









監督スパイク・リー
ロン・ストールワースの回顧小説を元にした映画。
ロンは署内で初のアフリカ系アメリカ人警官として採用され
紆余曲折あって潜入捜査班に配属、
黒人の差別反対運動などへの潜入調査を行っていた。
ある日新聞広告で、KKKの構成員募集の案内を見つけたロンは
電話でコンタクトをとり、差別的な発言を連発する事でKKKの
信用を勝ち取り、面談の約束を取り付けてしまう。
しかし有色人種である彼が行く訳にはいかず、
同僚の白人男性が影武者としてKKK団へ赴く…というあらすじ。

ブラックジョークと差別ねたてんこもりです。
あと怒りのパワーがすごい。
実在する人物、元KKK最高幹部デービッド・デュークなども登場しつつ
KKKの内部が描かれますが、徹底して絶対悪かつアンポンタンの大マヌケという描写です。
同僚の刑事を演じるアダム・ドライバーの、ちょっとふわふわした感じが、
いい具合に緩衝剤になってました。

ラストばれ(映画の感想のようなそうでないような…)

最初の映像、何か分からなかったので「ミード先生」と「南部」で検索したら
「風と共に去りぬ」の一場面でした。うーん、過去に見てるけど記憶にない。
この映画、しょっぱなが一番キツイと言っても過言ではないです。
黒人は嘘つきのサル、清らかな白人女性を狙う暴行魔、ユダヤ人は寄生虫、
屈辱的にも白人の子供たちが黒人と同じ学校で学ばなければならない、
我々はキリスト教的価値観を守らなければならない、等々
映画「ドリーム」や「デトロイト」「ヘアスプレー」等々で描かれた、
有色人種が傷付き勝ち取ってきた道程を
当時の白色人種の価値観から全否定する意見です。

白人のイントネーションと黒人のイントネーションの件、
私には全然聞き分けられなかったけど、面白い事は分かった。
あとジェシー・ワシントンリンチ事件に関する講演と
KKKの会合が交互に進行していく演出は緊張感がありました。
しかし「国民はそんな男を大統領に選ばない」というロンの台詞で
十分現実を皮肉っていることは分かるので、
ラストの2017年シャーロッツビルでの暴走車による攻撃の映像は
余剰に思った、というか、
ショッキングすぎて映画の印象の半分ほどが飛んでしまった。(私は)

「ブラックパンサー」、「グリーン・ブック」
そして「ブラック・クランズマン」
評価されたり批判されたり人気を博したり支持されたりした3作品ですが、
とりあえず哀れな奴隷が鞭打たれ、
理不尽な暴力に震えて泣く作品フェーズは終了したのかな?などと感じました。
「ブラックパンサー」は差別を経験していない、
むしろ世界水準よりも進んだ科学技術と豊かな資源を持った富める
南アフリカの小国が、世界に対して、差別を受ける同朋に対して、
どういう立場をとるかというファンタジーです。
(「ブラックパンサー」を試写で見たローレンス・フィッシュバーンくんが
「こいつは大変だ…こいつは大変だ…」ってずっと言ってたエピソードが好きです)
「グリーン・ブック」は怒りの感情のない物語です。
差別よりはむしろ、立場の違う2人の人間が
互いに影響され親しくなっていく過程が主体の物語のように思います。
逆に「ブラック・クランズマン」はブラックユーモアにくるまれてはいますが
ものすごい怒りと、あと少しの恐怖が伝わってくる話です。
しかしむしろこの作品を見て、有色人種に悪感情を持つ人も出るのでは?
というくらいの激しさがありました。
(作中で「国民の創生」という映画に影響されて
ジェシー・ワシントンリンチ事件が起きたという証言が語られましたが、
フィクションは現実に大きな影響を与えることができると私も思う)
3つの作品は出るべくして同時期に出たという感じ。

しかし「ブラック・クランズマン」がアカデミー作品賞をとるべきだったかといえば
残念ながら私にはそうは思えなくて、
それは爆破を防ぐくだりがあまりにもユルユルというか、
なぜ嫌っているアダム・ドライバーを爆殺計画の打合せに呼んだとか、
なぜ爆発物の受け渡しを会食の場で、とか
なぜ鞄を置いて帰らないとか、なぜスイッチを別の人間が確認もなしに押す?とか色々、
KKKの過激派が全員アホだからといえばそうかもしれないけど、
捜査班側が頭いい風に描かれているかといえばそうでもないように見える。
あと人種差別への怒りはキレキレだけど、性差別(セクハラ)への怒りはフワっとしている。
踊って楽しくして忘れようぜ、てきな。
セクハラ警官の仕置きも、そ、そんな雑な…みたいなやつだったし。
(バランスを鑑みて、作品賞は「女王陛下のお気に入り」が妥当だったのでは)

余談ですが、差別集団あるところレベル・フラッグ(南軍旗)ありで、
映画の中でも何度も見掛けますが、
これが掲揚されている場所には有色人種は近付かないほうが無難なので
覚えておいた方がいいですね…本当。












2019.03.25 サイトに掲載

2020.01.01 再掲載





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