「ROMA ローマ」









アカデミー賞で監督賞、外国語映画賞、撮影賞を獲得した
アルフォンソ・キュアロン監督のNetflixオリジナル映画。
3月9日より全国48館のイオンシネマで公開が始まりました。
娯楽作品じゃないのでみんなにおすすめって訳ではないんですが、
映像の美しさが、キュアロン監督作品中最高値なのと、
あと犬の声や、クラクションなどの街の空気の音が常に鳴っている映画なので
画を見たいひと、空気を鑑賞したいひとは配信よりも映画館お勧めです。

キュアロン監督が幼少の頃に
ROMA地区で暮らした数年間の記憶を正確に凝縮した作品で、
役者は大半が素人さんで役柄に近い職業の人なのだそうです。
そして時系列順に撮影したのだそう。
医者の白人一家と、
その家に住み込みで家政婦をしているクレオに起きた出来事を
淡々と描写しています。モノクロ作品。

私のようなセンスのないものには表現も難しいですが、
画の圧がすごかった。単純に構図が美しいのもあるけど、
それに奥行と上下の概念が加わって、異次元的な美しさでした。
手前から奥までレイヤーが何層にも重なっていて、
どのレイヤーも完璧、みたいなの。
ただ、監督の記憶を見る映画なので、
エンターテインメント的な起承転結は一切ありません。

私が週末に行った回はめちゃ大きなシアターでお客が数人という状態で、
「あああ…」って感じでした。
日本の田舎のアカデミー賞への関心は低い…。
あとメキシコを描いた白黒の半自伝的映画を見に来るような層は
ネットで告知しても拾えないんじゃないだろうか…。
新聞とかラジオでもう少しお知らせしてみては。

この映画を観た人はみんなチーンの話をしていますが(笑)
ボカシなしでかなり長くチーンが映ります。全裸のダームストラング。
私は映画でチーンが出てくると、
以前に他の映画で見たファスベンダーさんと比べてしまう悪癖を早く直したいです。

ラストまでばれ(あまりほめてない)

オープニングの床面、水が流れるだろうなとは思ってたけど、
空が映るのは予想外だった。
飛行機は最初とラストと変な日本武術の男の3回認識しましたけど他にもあったのかな。
土手の上にいるクレオが手前にいて、下の野原?畑?を子等が駆けて行き、
そのむこうにずっと自然が連なっているカットで一番ひえええと思いました。

一家の飼っている犬がぴょんぴょん跳ねてかわいいですが、
めちゃいっぱい糞が映る映画でもあります。
ていうか冒頭で掃除したばかりなのに、どんだけ食べたらあんなにいっぱい!?
犬を飼っている家が多いのか、クリスマスを過ごしたおうちに
歴代愛犬の首の剥製がズラズラ並んでいて、ちょっと銀河鉄道999を思い出した。

作中に出てきたメスカルは蒸留酒、プルケはリュウゼツランを発酵させて作る
古代からある醸造酒だそうです。度数は4%で、マッコリに似てるらしい。
ただ、プルケは発酵の進むお酒なのでメキシコ国外へ輸出はできないっぽい。
どうしても飲みたかったら、もやしもんでやったように自作するしかない…。

1971年の血の木曜日事件(コーパスクリスティの虐殺)が描かれます。
デモ中の学生たちが、政府とかかわりのある武装集団の襲撃を受けて
120人亡くなった事件です。約50年前のことですけど、
でもほんの数年前にもメキシコで学生運動をしていた子等が
43名拉致されて、今も見つかっていない恐ろしい事件が起こっていますね。

しかしこれ、クレオは友達の紹介で知り合った男性とセックスしたら妊娠して、
妊娠したと言ったら相手は秒でトンズラ決めて、
探して会いに行ったら、怒鳴られて殴られそうになって
「召使いめ!」って侮辱されて泣き寝入りで、子供は死産とか、
貧しく学もない、立場の弱い女性不憫萌えなのでは…?
違ったらしつれいだけど…。
雇用主のお父さんは浮気して出て行って養育費をビタイチ払わなくなって、
傷付いた女性同士、そっと寄り添って生きる…みたいなの分からなくはないけど、
これ「シンプル・フェイバー」だったら、
フルチンもお父さんも現住所特定されて、ぐっすりお休みの時間帯に
家に火をつけられて丸焼きですよ。

映画ではお父さん医者、お母さん生化学者だけど
リアル監督のお父さんは原子物理学者、お母さんは分からず…。
その辺は変えてあるんですね。

トゥインキー(お菓子)の名前が出てた。1971年のメキシコにすでにあったのか。

スピルバーグ監督が、アカデミー賞からのNetflix映画の締め出しを提言して、
物議を醸したりしました。
まあおじいちゃん、2015年にアメコミ映画オワコン発言とかして
ちょっと時流読み違えとかをね、たまにね。
(好き嫌いは別にしても2018年「ブラックパンサー」がエンタメ映画全体を少し変えたと思ってるので)
(もう少しマイルドに、それまでにあった流れの決定打になったと言い換えてもいい)









2019.03.11 サイトに掲載

2020.01.01 再掲載





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