「女王陛下のお気に入り」









監督ヨルゴス・ランティモス

フランスと膠着状態が続く18世紀初頭の英国、
アン女王は、財政を圧迫する戦争を
継続するか終結させるかの決断を迫られていた。
継続派の女傑、マールバラ公爵夫人サラは、
幼いころからの女王の友人で同性愛関係にもあり、
その影響力を政治に及ぼしていた。
ある日侯爵夫人のところに、没落した遠縁の美しい娘がやってきて、
自分を召使として雇ってくれないかと懇願する。
夫人は彼女を台所の下働きとして置くが、
やがて彼女は女王の看病をきっかけに顔を覚えられ、
徐々に女王の寵愛を得るようになっていく、というあらすじ。

3人の女性は実在する人物で、史実が元になっています。
ハートフォードシャーのハートフィールドハウスで撮影された
お屋敷の内部の重苦しい陰、背景の美術品と調度の美しさ、
3人の女性の衣裳、偏執的な美意識でまとめられています。
3人の愛情の話のような、そうでないような、
きれいはきたない、きたないはきれい、という感じの話。
演技合戦が見ものです。
3人全員がアカデミー賞助演・主演にノミネートされた。
オリヴィア・コールマンが主演女優賞をとりました。

同監督「ロブスター」を見ているので、
絶対に明るいラストではないし、
もしかすると小動物が苦しんで死ぬかも、という心の準備はしてました(笑)
とりあえずウサギ虐待はありますが、死なない。
鳥が何羽も死んで血が飛び散るのでそこは注意。

飲み過ぎげろ、食べ過ぎげろ、食あたり(毒)げろ、
フルセット揃ってます。美女のげろマニアの方は劇場へ今すぐ。

ラストばれ

欲望渦巻く宮廷劇であり、監督なりの恋愛物語でもあるような。
夫人の愛は支配と権力欲を伴うものではあったけど偽りではなかった。
アン女王は関心と愛情の餓鬼となって何も見えなくなった。
アビゲイルは他人も自分も道具のようにしか思っておらず、
それゆえに女王の望むまま躊躇なく何でも与えられたが
最後まで愛情からは遠いところにあった。

「私を取り合うなんて最高ですもの」というアン女王の台詞に、ぞわ…としました。
国境と性別を越えて、人間は取り合われるのが好きなんだな。本能だな。
映画とは関係ない現実の話だけど、
通常、人間はなぜか自分への愛情と称賛を疑えないようにできているので、
愛情と関心への飢えは注意してコントロールしなければならない。
最悪、無一文になって死にますよ本当。

この監督の作品は性愛への関心と意欲が高すぎて
「人間に性愛以上の大切なことってありますか!?」
ってパッションで他が見えにくいので、性愛抜きの映画を一度撮ってほしい。
あ、でも「聖なる鹿殺し」を見てないので、それがそうかも。
なるべく早く見ます。

痛風の痛みに牛肉を巻く!?宗教!?
って思ったんですが、冷やしてるんですね。
冷やすのは現在でも行われているらしいです。マッサージはよくないそう。
女王、終盤になるにつれ身体の左側が麻痺しているように見えましたが、
あれは痛風なんだろうか…?そして演技で表現しておられたんだろうか?










2019.03.07 サイトに掲載

2020.01.01 再掲載





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