「ヴェノム」









スパイダーマンのヴィラン、ヴェノムのスピンオフ映画。
おどろおどろしいヴィジュアルとCMから、ほぼホラーな内容を予想してましたが、
見てみたら、ラブロマンス映画でした。

評価が割れているのもよく分かります。
最近のアメコミ物映画の、キャラクターの魅力と能力が
最大限生かされるようにタイトに絞った展開と
息もつかせぬアクションの連続や、振り切れたギャグや、
ヴィランとの緻密な頭脳戦などを期待していると肩透かしを食らいますから。
これはラブロマンスなのです。
「あたしヴェノム、16歳」とかそういうモノローグで始まるべきなのです。
なので、運命の相手と出会う前のエディの失恋や挫折が丁寧に描かれるのです。

腕利きの記者であるエディはライフ財団への取材で、
財団が秘密裏に行っている人体実験と被験者の死について言及したため、
職を追われ、恋人も失う。
しかし彼は潜入した研究所で、見た事もない生命体と出会う…というあらすじ。

ヴェノムがエディのことを好きすぎて、
え?は?なんだって?って思っているうちに終わりました。

うしおととら、新一とミギー、ナルトと九尾の妖狐、という
「利害が完全一致している訳ではないけれど熱い」バディものの系譜です。
映画だと「スプラッシュ」とか「シェイプ・オブ・ウォーター」とか
「her/世界でひとつの彼女」とか「ウォーム・ボディーズ」とかああいう
異類婚姻系のやつ。

ラストばれ

最初は侵略の話とか地球出てく話してたのに、いつの間にかずっと居る!
って言ってるんだもんな…どこで気が変わったのさ。
俺たちは負け犬、俺たちは一緒、俺たちは、俺たちは。
ヴェノム、ああ見えて尽くすタイプなので、尽くして尽くして尽くしまくって、
ああいうラストで、もう本当お前…幸せになれよ。

内臓のダメージがひどいから寄生体を駆除しないと…というお医者さん(いい人)に
「話を聞くな!」っていうところ、必死すぎてかわいかった。
ところであそこ、「俺を殺すつもりだったのか」って
エディの心がヴェノムから離れたのだから、次の融合はエディからヴェノムを求めるのが
物語の調和というものなのに、ヴェノムから熱烈に行ってますからねしかもキス。
あそこあれでしょ、ヒロインとエディのキスっぽくしてごまかしてるけど
ヴェノムとエディのキスでしょう…知ってるよ…融合するのにキスする必要ないもんね。

全方位知覚、形状自由自在、頭脳を無視して体が動くアクション、面白かった。
カーチェイスも、衝突しそうな車を、
はいどいてねーってそっと横に除けるのとか、お茶目でもっと見たかった。

ただ、最初に書いた通り、ヒーロー映画としてはすごく出来が良い訳ではない。
おいおい、重要な機密を抱える悪の会社なのに社内カメラやモバイルで
社員の行動をチェックしてないのかよ!?とか
悪の会社を追い詰めるために、
その会社をクライアントに持つ弁護士の婚約者のメールを盗み見る
(そのせいで彼女は職を失う。私なら刺身包丁で肝臓を刺すわ…)
のはまあ話の流れとしても、別に証拠を固める訳でもなく
悪の会社の社長本人に「俺、知ってるもんねー!」って単にベラベラ話すとか、
社長やエディの頭がよくないというよりも、たぶんこれは監督の味なんだと思う。
でもラブロマンス映画だから、そこのところは別にいい。

そうそう、アントマン以降そういう流れになって嬉しい限りなんですが、
元妻の新しい夫がいい人パターン、
今回は元カノの新しい彼氏がめっちゃいい人&スペック高いんですけど、
主人公の俺以外の男は嫌なやつ&クズで、女はみんな主人公に惚れるしかないという
幼稚なドリーム創作とはもうおさらばだ!やったー!

ラストのアニメは、両者の世界は繋がってますよ!ってことなんだろうけど
系統が違いすぎてしかも結構な長さがあるので、映画の余韻が飛んでしまう。
個人の意見ですがやめてほしい。
どうしてもっていうならディズニーショートフィルム形式で冒頭にやってほしい。

エンドロール途中と最後に2映像あります。










2018.11.04 サイトに掲載

2019.01.01 再掲載





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