「デトロイト」 キャスリン・ビグロー監督 1967年、デトロイトは放火や略奪の起きる大暴動のさ中で、 州兵を投入した警戒態勢にあったが、 警官に対する発砲が起こり、狙撃犯が潜伏していると思しき建物に踏み込んだ警察と州兵は、 中にいた黒人へ行きすぎた尋問を行い、結果として死人の出る事態となる。 実際にあったアルジェ・モーテル事件(Algiers Motel incident)を下敷きとした作品。 かなりきつい。 デトロイトの暴動の夜に閉じ込められたような気持になります。 夜が明けないんじゃないかとすら。 ピントを合わせ直したりするハンディカム風の演出が時々入って、 臨場感があるんですがちょっと目が疲れます。 私は監督のファンなのと、アンソニー・マッキーさん、ウィル・ポールターさんを見に行きました。 アンソニー・マッキーさんとジョン・ボイエガさんの、 可能な限り毅然とした、自分の尊厳を守ろうとしている演技には救われました。 彼等が原始的な恐怖と怒りむき出しの顔をしていたらますます悲惨だっただろうので。 ウィル・ポールターさんの演技は凄かった。特に計算を巡らせている時のおすまし顔が。 これでアカデミー賞の候補にならないとはどういう事だと思った。 ラストばれ サイコパスがひどい事をしたという話だと、再発防止は比較的やり易いし 脳内では善悪二元論に落としこめるんですけど、 これはスタンフォード監獄実験と同じで 圧倒的に強い立場になって他人に加虐する事には愉悦があって、 その立場に立たされると多くの人間が誘惑に抗えないというケースで、 今後も世界中あらゆる場所で再度起こる可能性があるし、 再発防止もとてつもなく難しいという点がしんどいです。 (そういえば「es」という映画も、似たしんどさがありました) どっちかというとボイエガさんへの取り調べが恐怖の駄目押しになった感あります。 ちょっと白い肌と金髪の人が恐くなった。 以前のビグロー監督なら、夜が明けた瞬間にふつっと終わって、 裁判の経過をテロップで流してエンディングだったのではないかという気がします。 観客は心がズタズタになったままデトロイトから放り出されたのではないかと。 でも彼の聖歌隊のエピソードと、警備員の視点で締めてくれたことで 多少救いがあった。甘くもなったけど。監督、ちょっぴり優しくなられた…? 2018.01.28 サイトに掲載 2019.01.01 再掲載 戻る |