「ダンケルク」








監督脚本:クリストファー・ノーラン (今回は弟さんは参加せず)
音楽:ハンス・ジマー。
第二次世界大戦初期、フランスの北端ダンケルク海岸に包囲された
連合軍40万人の兵を、対岸の英国へ救出するための
「ダイナモ作戦」が敢行された。

・所属する隊の唯一の生き残り英国人のトミー二等兵は
 故郷に帰るために乗り込める船を探す
・政府からの要請で小型船に乗って息子と共に出港し、
 兵隊の救出に向かう英国人のドーソン
・ダンケルク脱出を阻むドイツの戦闘機を撃墜するため
 出撃した英国空軍のファリアとコリンズ

以上、陸・海・空3つのパートに分かれてお話は進行します。
リアルタイム同時進行ではなく3つに若干時間のずれがあり、
時々逆行したり、なおかつ別パートの人物が顔を出したりするので
集中して見られるコンディションが必要です。
映画を見る前にダンケルクの戦いとダイナモ作戦の予習をしていった方がいいし、
鑑賞中はなるべく人物の顔と服装の特徴を覚えた方がより理解できます。
私は「しまったスピットファイアとメッサーシュミットの見分け方も
勉強しておけばよかった…」と思った。

圧倒的文章力描写力による長編小説のような映画で
通常の戦争映画3本分の質量がありました。
でも上映時間は106分。これが150分くらいに感じられた。
海岸線や、海面や、空がやたら美しかった。
今回は革新的・実験的な部分は殆どなく、監督の演出腕力一本勝負です。

ラストばれ

夜の海を進む魚雷がまるで死そのもののように
ゆるぎない禍々しい動きで、駆逐艦は紙のように容易く沈み、
(知りませんでしたが駆逐艦って巡洋艦より小さいんですね)
戦闘機は地上を神のように支配し、
しかし刻一刻と容赦なく減っていく燃料、
揃って飛んでいた筈なのにいつの間にか消失している隊長機、
戦闘というよりはすべてが現象のようでした。
幾人かの登場人物をクローズアップして撮っているにもかかわらず、
同時に俯瞰で見ているような、不思議な感じがしました。
一番きれいなのは空のパートで、
なんとなくロアルド・ダール「飛行士たちの話」を思い出しました。
(紅の豚の飛行機墓場のシーンの元ネタになった短編があります)
戦闘機乗りがテーマの物語はどれも儚い感じがします。
最後に飛行士がマスクを取った時は「ごん、おまえだったのか」
と思いました。出てるのは知ってたけど、緊張が長くて忘れてた(笑)。
彼が捕縛されるシーンは本当に美しかった。
モノローグといい、監督が超腕力でぐいぐい締めた。

あまり好ましくない点3つ(ラストばれ)

・音楽を多用しすぎではないかと思った。
 秒針は最後に止める演出のために頻繁に鳴らしておく必要があるのは分かりますが、
 音楽はもうちょっと絞ってもよい気がした。
・兵士を助けるために船出した少年が、
 ヒステリーを起こした兵に暴力を振るわれ死んでしまい、
 17歳のダンケルク救出劇の英雄として新聞に載るのは、
 本人の夢だったのは分かるけど、グロテスクに感じた。
 あの記事は感動的なエピソードなの?それとも子供の死がプロパガンダに使われる鬱エピソード?
 ちょっと意図が分からない、
 あの少年の両親は?子供を殺されても軍相手だと当時は泣き寝入りなの?と思った。
・映画関係ないですが軍事作戦に民間船徴用がそもそも個人的にドン引きなので、
 集結した民間人に、兵たちが希望を見出すシーンにはつらいものがあった。
 いや、鉄板演出なのは理解してます。

ノーラン監督、CGを使わない、デジタルカメラも嫌い、本物志向!
という面をなぜか予告で強調されており、
日本の配給会社は彼をこだわりの巨匠キャラクターとして売ってくつもりなの?と思った。
ちょっと前まで(私のちょっと前は10年以上前とか)は新進気鋭の若手監督だったのにね…。










2017.09.11 サイトに掲載

2018.01.30 再掲載





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