「エル ELLE」








ゲーム会社を経営する女性主人公は、
屋外に出ていた猫を家に入れようとドアを開けた瞬間、
押し入ってきた覆面の男に白昼性的暴行を受ける。
犯人が逃走したあと、彼女は警察には知らせず
これまで通りの生活を続ける。
仕事で辣腕を振るう彼女を恨む人間が社内に幾人か存在し、
また別れた前夫、現在肉体関係のある既婚男性、等々
複雑な人間関係の中に疑わしい人物が複数いるのだった。というあらすじ。

私は、性暴力を受けたヒロインが衝撃的な復讐を遂げる!
というような紹介文を見て、
バーホーベン的血みどろリベンジを期待して映画館に行ったのですが、
それはどうやら見間違いだったようで、この映画は復讐ものではなかったです。
というか、無理矢理分類するとしたらサスペンスになるんでしょうけど、
この映画、どのジャンルでもない内容です。見終わってしばらく考えました。
フランス、ベルギー、ドイツ製作。舞台はフランス。監督はポール・バーホーベン。
原作小説はあるようですが、79歳でこれまでのスタイルとは違う、
ジャンルを越えるような映画を撮れるのはすごい事です。

強さというのは、他者を圧する強さと、自分が揺るがない強さの
2種類があると思のですが、この映画の主人公は後者で、圧倒的強者です。
主演はイザベル・ユペール。お姿も立ち居振る舞いも、ものすごくお美しいです。
見ていて楽しくなるとか愉快になるとかではないが、なんかすごい映画です。
でも人を選びます。

ラストばれ

最初は、出来事は全部彼女の目論見通りで、
母を殺し、父を自殺に追い込み、元夫を新しい彼女と別れさせ、
親友の夫を寝取ったと見せかけて実は目当ては親友で、それも手に入れ、
あの事件を利用してショックを受けた息子を取戻し自分の支配下に置いて、
欲しいものを全部取り戻したハッピーエンドなのだと思ったのですが、
どうやらそうではないようです。

あやういバランスで成り立っていて、
下手をすると自分をレイプした男を愛してしまう、
性欲旺盛な哀れな老女の話、
または過去の事件のせいで
心を失ったサイコパス女の話になってしまうところですが、
(そういう風に読み取ったひともいると思うけど)
けれど彼女は美しく、地位も財産も友人も、
人の羨むものは全て持っており、そして王者のように心が強い。
性暴力は彼女を傷つけたりはせず、
それは日常の雑音の延長で、彼女は楽しんでもいいし、相手を破壊してもいい。
すべては彼女が決める。という話なのだと思いました。

途中で麻痺してしまうくらいクズ満載で、
女社長の触手凌辱エロ動画をCGで作ってしまう部下、
性暴力を受けたばかりの主人公に「やろうよ!平気だよ!手だけでもいいよ!」
って迫ってくる愛人、近所の人を20人以上殺した父と
「どうして父さんに面会してあげないの!?」って叱る母、
定職に付けずどう見てもヤバイ女に骨抜きにされ、
生活費をタカってくる息子…と挙げるときりがないです。
親友の旦那を寝取ったり、近所の妻帯者を誘惑したりする主人公が、
かわいく思えるくらいです。
それにしても甘やかした風でもないのになぜあの息子はあんなアカン子に育ったのか。
まあ、母が理性の権化なので、好きな女の子が感情の権化になっちゃうのは分かるけど(笑)

どうでもいいけど相変わらず「ぴゅたーん(畜生)」だけは聞き取れる…。

予告(性暴力のシーンがあります)
https://www.youtube.com/watch?v=_hycHCHryVI&app=desktop









2017.08.31 サイトに掲載

2018.01.30 再掲載





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