「神様メール」








ジャコ・ヴァン・ドルマル監督作品。
前作の「ミスター・ノーバディ」もすごかったですが、
この監督はほかに類似作のない、分類の難しい映画を撮る、
わりと寡作の人です。ベルギー人。
どっちかといえば玄人好みな作風。
めっちゃ性格がクズな神様(ふんわりした神ではなく、
キリスト教・イスラム教・ユダヤ教共通の、あの神様であるとはっきり描かれる)
はブリュッセルで、同居の妻と娘を虐待しながら、
人類に碌でもない試練を与えて暮らしていた。
父親が大嫌いな娘のエアは、
まず父のパソコンから下界の全ての人に寿命を知らせるメールを出し、
続いて兄のJC(の像)の助言をもとに、
使徒の数を、父の好きな12という数字から、
母の好きな18に変えるために下界へと冒険に出る、というあらすじ。
兄のJCって要するに、いえっさな。オチもなんかすごい。

おちばれ注意!
この神のクズっぷりは本物で、
娘をベルトで打ったりとかするうえに、
スーパーのレジで隣の列が必ず早く進んだり、
食器を落としてしまうのは必ず洗った後だったり、
パンを落としたらジャムの面が下になるのも、
お風呂に入った瞬間電話が鳴るのも、
あとあらゆる大規模災害や大きな事故も、
全部この神のしわざなのです。

結局エアの奇妙な使徒探しの旅は無事終了し、
クズな神は地上でありとあらゆる酷い目に遭い、
委縮して暮らしていた神の妻はパソコンを手にします。
そしてOSと妻との短い会話で、
ここ数千年のメジャーな宗教よりも昔に信仰されていた女神こそ
彼女であるということが分かります。
女神は地上にありとあらゆる素敵な事を起こし、世界は変ります。
神が変わって世界が再起動されるという、
こんな力技の超超ハッピーエンド、見たことありません。
ちなみに原題は「新・新約聖書」です。

偶像崇拝を禁じている宗教があった気がするんだけど、
無機物でなく有機物の人間が演じるのはいいのかな…?
いやでもメチャクチャ神を愚弄してるけど、大丈夫なんだろうか。
もう製作されてから2年ほど経過して、監督無事みたいだからいいのかな。
還暦でこのあらすじの映画を撮るって凄すぎるので、
いつまでもお元気で、時々映画を撮っていただきたいです。










2017.06.06 サイトに掲載

2018.01.30 再掲載





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