「虐殺器官」









伊藤計劃さんの小説、または原案の3作品を映画化する
PROJECT ITOH、製作アニメ会社の倒産で
公開順序が変わるなど色々ありましたが
なんとか完結しました。よかったー!

アメリカ情報軍所属のクラヴィス・シェパード中尉は、
ある男の探索と暗殺の指示を受ける。
男の名はジョン・ポール。
彼が訪れた途上国では、順調に国が復興していたにも関わらず、
突如虐殺と内戦が始まるという極秘の調査報告があった、というあらすじ。

3作の中では一番硬派です。
台詞も可能な限り忠実に拾ってある。
ただしテキスト量が多いので
声優さんはすごい勢いで喋らないといけないし、
それでも尺が足りなくてクラヴィスの家庭の話は全カットでした。
うーん、でも仕方ない改変かなと見ていて思いました。
善戦してる。どちらか選べって言われたらそりゃ原作だけど。

内容ばれ

アレックスの死因、どうしてああいう風に改変したんだろう。
ちょっと意図が分からなかった。
あとラスト、荒廃の始まるところまで描かれないので、
ハッピーエンドだと解釈したひとがいないか若干心配。
それ以外は、全裸の子が下着をつけていたりとか、
その程度の変更はありましたが、残酷な所も原作通りに描写されていて、
誠実な映画化だなと思いました。

最初に殺される独裁者が
「寛容と多文化主義こそがこの国の美徳ではなかったか?」
「なぜだ、なぜこんなことになったんだ?」
と問うシーンがあるのですが
(映画では「多様性こそがこの国の美徳」と言い換えてた気がします)
作品内ではその非道を断罪するのはアメリカなのに、
現在の状況では今にもあべこべの立場になりそうで、
ちょっと皮肉だなと感じました。
伊藤先生もまさかアメリカがああいう風になるとは予想されなかったことでしょう。

独裁者の色彩が光学迷彩に取りこまれて恐怖を覚えるシーンは、
ちょっとイメージと違った。
でもチェコの路上で追跡者を蹴って殴るシーンはとっても印象的でした。

原作のルツィアは33歳なんだけど、アニメはあれ、幾つの設定なんだろう。
まあ若く見えるという描写はあるけども。










2017.02.09 サイトに掲載

2018.01.30 再掲載





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