「この世界の片隅に」 小さな頃からちょっとぼんやりとした少女だった浦野すずは、 そのままの性質で成長し、家事家業を手伝いながら趣味の写生をして暮らしていた。 ある日突然すずを嫁に望む男性が現れて呉に嫁ぎ、婚家に尽くす。 ぼんやりとしたすずは時々失敗をしでかすが、 素直な彼女は夫を始めとする周囲に愛される。 しかし戦争が激化し、軍港と工場のある呉は 頻繁に空襲の標的となるのだった…というあらすじ。 素朴な絵柄ですが、柔らかそうな人物が軽やかに動きます。 仕草の描写がとても細やか。 少ない物資で工夫して作るごはんはおいしそうです。 昔の広島の言葉は温かくて、そして言い回しもとても優しいです。 人間以外の色々なものに敬語をつけて喋る方言は、なんかいいですね。 すずは、のんさん(能年玲奈さん)が演じます。 おっとりしているのですが、記号的なおっとり美少女ではなく、 内側に生々しい激情があるという点にぴったりあっておられました。 つらい描写がないではないんですが、 現実の世界からすずの絵に時折カメラが切り替わる演出と、あと のんさんの声とコトリンゴさんの歌で少し緩和されたように思います。 内容ばれ 姪と腕のところも厳しかったんですが、 「ぼうっとした、うち(私)のまま死にたかったなあ」 ってすずが泣くところがつらくて見ちゃおれませんでした。 私達が全員死ぬまでやれ!って怒るすずの気持ちはよく分かった。 それくらいでやめるなら最初からやるなよ…って私も考えると思う。 北條さんとすずの、お互いに言葉の足りない両片想いは良かったです。 観客はみんな「あのときの男の子だ…」って分かったって思うんですが、 すずは最後まで気付いてませんでしたねあれは…。 そして可愛い2人のやりとりですが、時々はすごく色っぽかった。 婚礼の日のごちそうを前になぜ北條さんが拳を震わせていたのか、 北條さんのノートの表紙が一部分切れていた理由、 あと人さらいは何なのか、 原作を読めば分かるみたいなので、 しばらく間を置いて読んでみようと思います。 2016.11.21 サイトに掲載 2016.12.30 再掲載 戻る |