「奇蹟がくれた数式」 19世紀生まれのインド人でありながら、 ケンブリッジ大学に招聘されて数学を研究した 天才数学者シュリニヴァーサ・アイヤンガー・ラマヌジャンと、 彼を英国に呼び寄せた数学者ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディの友情を描いた映画。 ラマヌジャンは神からのギフトを与えられた真の天才ですが、 数学の世界においては人種、(欧州の価値観では)きちんとした教育を受けていない事、 等々大きなハンデを持っています。 ハロルドは(この映画の中では)ラマヌジャンほどの才能は持っていませんが、 ケンブリッジの教授職という社会的地位を持っています。 加えていうなら、ラマヌジャンは強い信仰心を持ち、 妻と家族を愛する男ですが、 ハロルドは無神論者で家族もおらず(当時の大学教授は妻帯しない人も多かった) 人と接するのが上手くありません。 そんな2人が、ラマヌジャンが次々と「発見」する独創的な数式を、 偏見に凝り固まった世間に認めさせるためにチームを組みます。 面白かった。天才と凡人もの、格差友情もの、英国ものが好きな人におすすめです。 二次創作の世界では、他の国の人の漫画や小説は、 言語がネックになって内容が分からない事にぐぬぬする羽目になるんですが、 数学畑の人々は世界のどこでも(アラビア数字使用圏であれば) 翻訳必要なしに「こいつはすごい」「おもしろい」ってすぐに分かるのだなあ、 羨ましい!と思いました。 ラストばれ 最近はイギリスのよい面を描いた映画ばかりを見ていたので、 鼻持ちならない差別的排他的特権階級意識に凝り固まった英国を 久しぶりに見て、「うんうん、これだよこれ」と思いました。 だいたい彼等は差別している意識とかはなさそうで、 実にのびのびとピュアに差別をぶちかましていました。 (差別は悪いことであるというモラルは、そんなに古いものではないし) (あと自分は嫉妬している、恐れている等の感情の動きを 自覚できるかできないかは、頭の良さに関係ないと思います) 天才には常に、その才能を世間に翻訳する人物が ペアとなって寄り添うべきだと私は思うんですが、 ラマヌジャンにはハロルドがいて、 更に不器用なハロルドのために2人の橋渡しになるリトルウッドがいて、 この3人のチームは完璧です。リトルウッドは天使。 ところでハロルドとリトルウッドはズッ友で、共同研究を続けていくのですが、 業界ではリトルウッドはハロルドの脳内友達説があったというのは事実ねたみたいです。 wikipediaを見ると、菜食主義ゆえに体を壊したのも、自殺未遂も、1729も、 全部実際にあったんですね。 (そうそう、あの鬼姑が行いに相応しい罰を受けなかったので憤懣収まらぬ感じです。 自分が遠因となってあんなラストになったとはいえ!嫁は姑に腹パン入れてもいい) (とはいえ実在の人物をほぼ悪役にしてしまって大丈夫でしょうか) 作中、ケンブリッジを去る教授が、次の就職先はオックスフォードだと告げ、 呼び戻されるのを待つって言っていて、オックスフォード<ケンブリッジなのか? と思って調べたら、そんな感じでした。 オックスフォードは政治家が多く、ケンブリッジは一流研究者が多いのですね。 学力もケンブリッジの方が高い。 ちなみにラマヌジャンがケンブリッジを去った数年後に、 トールキンがオックスフォードの教授に就任しています。時代感把握。 ラマヌジャンが、数式は女神から与えられる って告白したときのハロルドの顔がすごくかわいかった。まばたきの使い方が。 東洋の神秘は信じられないが、君は信じるって言う、 ハロルド渾身の譲歩のときの顔とか。 あとお別れのときの、「ハグどうしよう…ハグ…」っていう 2人の間の空気感。(独りスタオベしそうになりました) 「神の御心でないなら、数式など何の意味もない」 というラマヌジャンのセリフが好きです。 2016.10.27 サイトに掲載 2016.12.30 再掲載 戻る |