「トランボ」









アメリカで1940年代に巻き起こった
共産主義思想の弾圧に真っ向から反発し、逮捕投獄され、
ハリウッドから締め出されたにもかかわらず
偽名で脚本を大量執筆し、アカデミー賞まで取ってしまった脚本家、
ダルトン・トランボの伝記的映画です。

おいしくて高級なお料理は食べた瞬間は
何の味かわからず、様々な食物の匂いや食感が知覚されますが
この映画もそんな感じで、
才能と情熱の話、友情の話、家族の話、思想弾圧の話が描かれますが、
1つ1つのパーツは分離せずに複雑に絡み合っている、
相当に緻密な脚本です。

ラストばれ

不勉強ながらダルトン・トランボさんの事を存じ上げず、
偽名のまま「黒い牡牛」と「ローマの休日」で賞を取ってしまわれたのに
ものすごくびっくりしました。

その才能もさることながら、
収監され、かつての仕事相手から冷たい仕打ちを受け、
友人の死や転身を経て、それでも折れずに執筆を続けられた精神力が凄いです。
不遇のうちに死ぬ天才もいますが、この人の場合は
周囲がその才能を放っておかなかった。

B級映画製作会社社長の、思想とか難しい事は
俺も分からないしうちの客も分からない。
めんどくさいやつは殺す!みたいな態度は爽快でした。

「スパルタカス」で再び彼の名前がクレジットされるのは、
彼の作品が素晴らしいという要素の他にも
なにか駆け引きがあったんじゃないかという気がしましたが
面白そうなので調べてみたいです。

妻子が「お父さんすごい!大好き!」のヨイショ要員じゃなかくて
妻は夫が家族にとって害になると判断したら容赦なく切り捨てるし、
娘ちゃんには娘ちゃんの主義があって、
お父さんが逆にその姿勢を尊敬したり学んだりする、
というのが今風の映画だなと思いました。

肩の上のオカメインコと常にイチャイチャしている初老の男性とか、
話を盛るのも大概にしろしと思ったけど、最後の本人映像で
単なる事実と分かった…。












2016.08.19 サイトに掲載

2016.12.30 再掲載





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