「ブルックリン」 故郷アイルランドに姉と年老いた母を残して アメリカに職を求めて移り住んだエイリシュは ホームシックに苦しみながらも デパートに勤め、夜学で簿記を学び、恋人も出来て 充実した生活を送っていた。 しかし転機が訪れ、彼女は選択を迫られる、というあらすじ。 描写が細やかで、エイリシュの心情の変化ももちろんですが 1950年代のアメリカの生活、移民事情が丁寧に描かれ 見応えがありました。 登場人物は、あまり好ましくない感じに見えた人でも 実はいい人だったりして(1名除く)、ストレスなく見られました。 地方から1人で上京して働いてる女性は、 特に胸にくるものがあるかもです。 ラストばれ 半世紀前にアメリカに渡ってきて都市を造っていた人たちが 年老いて職もなくお金もなく孤独で…というシーン、 あそこで歌われたアイルランド民謡が滲みた。 「Casadh an Tsugain」という曲のようですが、 さっぱりわからない言語ながら、メロディは妙に懐かしかった。 主人公のお勤め先のデパート、内装が素敵でした。特別な空間という感じ。 気送管が当時デパートで使われてたなんて知らなかった。 女子寮も、最初は胃が痛くなりそうだったけど、 やっぱり華やかでいいですね。 当時のコニーアイランドって定番デートスポットかつ あんな風に壮絶に混み合ってたのですね。 船室でのやり取りも興味深かった。 当時パスタが一般的ではなく、主人公が食べ方の勉強したりするのも。 (イタリアからの移民は何十年も前に来てる筈だけど広まらなかったんだ…) そういえば女優の排泄シーンのある映画を探し求める一部の男性方に 「ブルックリン」はシアーシャ・ローナンの排便シーンがありますよと教えてあげたい…。 男性不在の家を気にかけて就職口や学業の援助をし、 ショックな事があればすぐにメンタルケアをしてあげるという 教会というシステムは、長く続いてきただけあって優れてるなーと、 神父の児童性的虐待を扱った映画「スポットライト」を見たあとでも 思わざるを得ない。神父さんがものごっついい人だった。 イタリア人彼氏とその家族、好ましい人達だった。 アイリッシュといえば警官、イタリア人といえば配管工なのかな?でもなんで? この映画は、彼女を絶対に戻ってこさせようとするイタリア人彼氏と、 娘を自分の近くに囲い込もうとするお母さんの、頭脳戦という一面もあったけど、 彼氏が打っておいた手が後になって効いてきて、彼氏が勝った。 運も彼氏に味方した。 ただ1点腑に落ちなかったのは、 結婚の事を周囲に黙っていたのも、 かつて故郷で望んでも得えられなかった職や ハイクラスの男性からの求愛で心が揺らいで、 結果的に相手男性を騙して傷付ける形になった(あのひと女運ない…)のも、 何の落ち度もない夫を裏切りかけたのも、 まあ人間そういう事もあるかもしれないからいいとして、 最後雑貨屋の性格の悪いおばさんにいじめられた主人公かわいそう!田舎サイテー! みたいな演出になっているのは「……?」だった。 雑貨屋のおばさんが性格悪い人なのに異論はないけど お蔭で道を踏み外さなくて助かったのでは…? 周囲に助けられて成長したエイリシュが 最後には人を助ける立場になっていたのがいいですね。 2016.07.13 サイトに掲載 2016.12.30 再掲載 戻る |