「パージ」








ジェームズ・デモナコ監督。
2022年、アメリカは経済崩壊を経て、
現在は新政府が統治している。
その政権下では、「パージ」という、
1年に1度すべての犯罪が合法化する12時間を設ける事によって
国民のフラストレーションを解消し、
犯罪率失業率を低い数値に抑える事に成功していた。

主人公は防犯システムの販売会社に勤める中年男性。
美しい妻と、娘、息子の4人で、いつものように堅牢な家に隠れて
パージの夜を過ごそうとしていたが、自宅前で殺されようとしていた男性を
息子が建物内に入れてしまったために、すべてが狂い始める…というあらすじ。
ホラーかつディストピアものです。
皮肉の利いた展開をするので、なかなか考えさせられます。

オープニング、ドビュッシーのピアノ曲をバックに
過去の「パージ」の不鮮明な虐殺映像が静かに流れるシーン、センス良かった。
監督は「交渉人」の脚本を書いた人です。
低予算映画ながらバーンと儲かったので続編が作られました。

結末ばれ

十代の子が見たらどう思うかは分からないけど、
とりあえず私はお父さんかわいそうだった…。
頑張って稼いで、家族が安全に過ごせるシステムを買っても、
娘が彼氏を家に入れちゃってて、彼氏は交際に反対する父を殺す気満々だし、
それを返り討ちにして撃ち殺したら娘が怒るし責められるし、
息子はなんか家の前で殺されそうな男を勝手に家の中に入れちゃうし、
その男を追ってきた集団に、そいつを差し出さないと家族全員皆殺しだぞ!
って脅されてあわてて侵入者をつかまえて放り出そうとしたら妻に責められるし、
どういう無理ゲーなのこれ…。(娘と息子が黒幕かと思った)

というか、人を見捨てるのもイヤ、自分が殺されるのもイヤ、
でも自分では何もできないから何とかしてって、イヤイヤ期の幼児か。
パージなんて物騒な制度のある世界で、
なんであの2人はあんなお花畑のような脳の子に成長したの…。
他人を見捨てたくないという精神は立派だけど、
それは肉親の命と引き換えにすることか…?
そしてなぜあなたたちは1か月ほど国外にバカンスに行く手段をとらないの。

自分だったらどうするか、パージという制度について、考えるのが楽しい映画です。
パージで、安全を金で買えない貧困層や病人や年寄りが死ぬので
(それらに税金が使われず)社会は安定する、という設定のようです。
でもどうかな、貧困層を殺して回る人より、
警護の薄いお金持ちの家を襲って金品を強奪する人の方が多くないかな。
あと女性の数が減ると思う。
1年に1回、死亡届や相続手続きで役所の窓口がパンクして、
病院、消防関係もそうで、破壊された家屋や電化製品の修理・新規購入も
集中するのって効率良いだろうか…?

パージ=銃社会だと考えると、
お前たち、早くその狂った制度を放棄するんだー!って思いますね。











2016.06.24 サイトに掲載

2016.12.30 再掲載





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