「スポットライト 世紀のスクープ」 トム・マッカーシー監督 ボストン最大手の新聞ボストン・グローブに 新編集長が就任する。 彼は、少人数で長期間の取材を行う「スポットライト」という コーナーを担当する部署に、 ゲーガン神父の性虐待事件を追ってみるよう指示する。 4人の記者は戸惑いながら調査を開始するが、 やがてそれは1人の神父の犯罪にとどまらず、 カトリック教会が長年隠蔽してきた、 おぞましい事実を明らかにしていく、という実話を元にした作品です。 派手なエンタメ的表現はなく、事実に誠実な作りです。 記者達は人生を破壊された被害者たちから地道に話を聞き、 残業してひたすらリストをチェックしていき、信仰が揺らぎ、 それでも職業倫理と自分の良心に従って仕事をします。 そして仲のいい善良な友人たちから調査を取りやめるよう あくまで丁寧に相談されます。 悪と戦う善!という体裁ではなく、 被害者がいて、普通の人間がいて、という感じです。 それでも途中すごくどきどきしました。 カトリック教会という組織の大きさが怖かったです。 彼等は何百年も、もしかしたら千年以上ずっと 被害者に沈黙を強いてきて、 現代になっても司法を取り込んで 加害者は罰せられず、その事を誰も疑問に思わなかった。 けれど千年前に比べると格段に人権は尊重されるようになり、 当然子供の人権も同様で、 また子供の性虐待の知識も皆が共有するようになった。 教会は変化を取り入れるのを怠り、それに気付かなかった。 人口の半数近くをアイルランド系、イタリア系が占め、 カトリックの強い都市ボストンで、 皆が黙認してきた慣例を引っくり返すきっかけを作ったのが、 外部から来たユダヤ人の編集長と アルメニア系の弁護士というのが面白いなと思いました。 そういえばこの事件、ハリポタを悪魔の書とした法王様を、 異例の辞任においやった主要因と言われてます。 内容ばれ この事件はあとになって日本の新聞にも載ったように記憶してます。 リアルだなと思ったのが、記事が完成に近付いた頃に9.11が起こって 調査がいったん凍結されるところ。 役者さんの演技もそれぞれよかった。 派手な技巧を凝らした演技ではなく、 市井の人々の怒り、善意、葛藤だったのが特に。 神父の性的虐待を専門に研究している人に、 「6%は性虐待を行っている筈だ」って言われて、 記者達が「ボストンにいる神父は1500人、 6%といえば90人、そんなまさか!」って調べてみたら、 結局は87人いたシーン、統計(?)すげえ!って思いました。 ところであの人からの電話が意味深に途中で切れた時、 まさか消された!?って心配したんですが、結局何だったの(笑) その専門家の人(元神父)が言っていた、 「信仰は永遠だが、人間の作った組織はそうではない」 というようなセリフがすべての答えのように思います。 映画の最後に、神父による性的虐待が行われていた都市名が 小さい字でずらずらと並んで、ゾーっとしました。 映画とは関係ない話 確か日本でも似た事件が最近あったような…って思って調べたら、 全然最近じゃなくて、そして正確にはキリスト教系新興宗教だった。 でも根本は同じですね。 この件は、積極的に協力していた成人女性達がいたと 確か新聞記事に書いてありました。「聖神中央教会事件」 他人を蹂躙したいという願望を持った人が確実にいて、 それは全体の何割かという決して少なくはない数字で、 そのうちの何割かは、機会があればやってしまうひとで、 その「機会」というのは、人間関係で上下の差が大きいと発生するもので、 たとえば教師と生徒、上司と部下、買い手と売り手、 コーチと選手、導師と信者、それとあと親と子も。 どうすればそれを防げるか、そろそろ本気だして考えないといけません。 2016.04.18 サイトに掲載 2016.12.30 再掲載 戻る |