「キャロル」








百貨店で売り子をしている女の子が、
客として売り場にやってきた美しい人妻に恋をして
彼女にのめりこんでいくというあらすじ。

原作がパトリシア・ハイスミスなので「絶対暗黒ラストだ…」
って行くのをためらってましたが、
先に見たかたから「大丈夫ですよ!」って教えて頂いて鑑賞しました。

人妻をケイト・ブランシェット、
百貨店の売り子娘をルーニー・マーラが演じます。
ともかく細部まで美意識の行き届いた映画でした。
女優さんの服装、髪型、小物、メイク、靴は当然ながら、
仕草や姿勢や、1950年代の街並み、
当時のレストランやホテル、その調度や色彩全部。
わざと昔の映画風に撮ってある、
褪せた色やピントのシャープじゃない所も。

性行為のシーンがあるのでご家族向きではない。
男性登場人物は酷い描かれ方と扱いなのでカップル向きでもないです。
(美意識高い系カップルならあるいは?)

ラストばれ?

2人は車で旅をするのですが、
運転中に人妻の毛皮のコートをキャッキャ笑いながら脱がせてあげるシーンや、
人妻が売り子娘にお化粧をしてあげる遊びや、香水を付けてあげた場面、
The百合!という感じで良かったです。
あと、機関車のミニチュアについてちょっと喋って、
自分が幼女だった頃に機関車のおもちゃが欲しかったというのを売り子娘から聞いて、
人妻が自分の娘に機関車を買うシーンも好き。

監督さんが原作者さんかどちらかは分からないけど、
この人はたぶん外見や仕草で人を好きになるタイプだな…と思った。
というのは、互いがどういう人なのか、どういう生い立ちでどういう本を読み
どういう宗教で、どういう料理を好み、どういう動物が好きで、
どんな欠点があるのか、それらに関して会話するシーンはあまりなくて、
知っていくうえでの驚きや喜びや興味などの感情は描かれてなかったので。
会話や人となりよりは、やはり仕草や表情をじっくり撮ってあった。

人柄と感情に恋をする、男性同士の愛を描いた
同じく美意識炸裂映画「シングルマン」と両極だな、という気がした。なんとなく。

物語としてでなく、恋愛を見た場合、
人妻と売り子娘では経験値とスキルが違いすぎてあまりに不平等なので、
一度別れて、売り子娘が恋愛経験値を積んでからもう一度付き合った方が…と思います。
というか、ぼんやりとしていて、「話を聞いてる?」とよく人に尋ねられ、
誰に対しても拒否せず、彼氏がいるのに他の男性にキスされても
怒りを態度で示すわけでもない売り子娘が、
人妻と付き合う事で急速に大人になり自我を形作って、
結局は人妻と別れる道を自分の意思で選択するというラストか…綺麗にまとめたな…
と思ってたら違ったのでびっくりした。

しつこいですが、ハイスミスなので原作は自殺か心中エンドでしょう…
と決めつけてましたが、本屋さんでぱらっと見てみたらラストは同じでした。
検索してみたら、この作品はハイスミスが別名義で書いた作品で、
彼女の実体験を元に書かれており、現実ではキャロルにあたる人妻は自殺なさったのだそうです。
…せめて物語の中でだけは幸せに系創作でしたか…。











2016.02.16 サイトに掲載

2016.12.30 再掲載





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