「白鯨との闘い」








1819年、ナンタケットを出発した捕鯨船エセックス号は
鯨の群れを追って南太平洋沖へ1年以上の航海を続けていた。
豊かな漁場を見つけた彼等は、しかし常識を越えた巨大なクジラの襲撃を受け
船は沈没する。
3艘のボートに分かれて脱出した乗組員たちに残された食料と水は少なく、
彼等は生き残るうえで、壮絶な苦難を経験をする。実話を元にした小説が原作です。

約30年後、駆け出しの作家メルヴィルが
エセックス号の数少ない生き残りの水夫トマスを訪ねる。
彼はエセックス号での出来事を小説にするため、真実を聞かせてほしいと頼む。
「これはポラード船長と、一等航海士チェイス、2人の男の物語だ」
とトマスは話し始める。というあらすじ。

わりと予告では巨大鯨と闘う男たちがクローズアップされてますが、
どちらかと言えば遭難してからが話のメインです。
百戦錬磨の一等航海士チェイス、
家柄で船長になったコンプレックスを持つポラードの友情の話でもあります。
(最初の頃、不仲な夫婦のようって言われててふいた)

内容ばれ

マシューがチェイスにささげる友情や、
いとこのコフィンが見せる自己犠牲の精神、
立場から来る反目や、宗教観の違いを乗り越えて
最終的には戦友のような関係になれたチェイスとポラード、
男達の人間関係の描き方はさすがロン・ハワード監督です。
リアリストで恐れを知らないチェイスが、
最後に畏敬という感情を覚えたシーンが印象的だった。

現実ではチェイスは捕鯨船に乗り続け、最後には心を病んでしまったらしく、
映画は細かく改変の加えられたハッピーエンド版、という感じで良かった。

展帆とか側帆とか知らない言葉がたくさん出てきて
家に帰ってから検索しました。
しかしあんな木でできた船で遠洋まで乗りだし、
嵐を乗り越え、鯨を捕り尽くす勢いで殺しまくるというのは
昔の人間のバイタリティすごいな…って思います。

ナンタケットという言葉に聞き覚えがあったんですが、
「ライフ・オブ・パイ」で虎の名前に使われたリチャード・パーカーが登場する、
ポーの長編小説「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」でした。
エセックス号の惨劇をヒントに、
怪物鯨にフォーカスしたのがメルヴィルの「白鯨」、
食人にフォーカスしたのがポーの「アーサー・ゴードン・ピムの物語」。
「ライフ・オブ・パイ」とこの映画は従兄妹みたいな関係ですね。

食人の部分を予告でまったく隠してしまうのはどうだろう。
日本だとこの事件の知名度はそんなに高くないと思うし。
苦手な人が避けられないのでは?それとも驚愕のオチ的な扱い…?












2016.01.24 サイトに掲載

2016.12.30 再掲載





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