「ジョン・ウィック」








ガソリンスタンドで給油中のヴィンテージカーと
その寡黙な持ち主に目を付けたロシアマフィアのボスの息子は、
その男の自宅に夜中に侵入し、男を叩きのめし飼い犬を殺して車を奪う。
被害者は泣き寝入りするはずだった。しかし事情を知ったマフィアのボスは顔色を変える。
その男こそ、組織を拡大させた伝説の殺し屋で、5年前に一般人の女性と恋に落ち、
裏稼業から足を洗って静かに暮らしていたジョン・ウィックだった…というあらすじ。
コミックのような世界と、現実世界のちょうど中間のような世界観です。
殺し屋たちが手出しをしないという協定を結んでいる聖域「コンチネンタルホテル」、
すべてを心得ていて訛った英語を話すフロントマン、
ディナーという隠語で呼ばれる遺体処理サービス。

車と銃と格闘シーン、最強の男が無双するという男性ホイホイの黄金パターンですが、
この映画の特色は、キアヌ演じるジョンが最愛の妻を病で失い、
その妻がジョンを孤独から守るために最後に贈った子犬デイジー
(これがもう、観客がショック死するほどかわいい!)を殺されて、
悲しみで気が狂いそうになっているところ。
敵以外のキャラクターはそんなジョンに妙に優しく、
組織の人間たちがきちんと奥さんの死にお悔やみを言ったり、
または殺し屋仲間がお葬式に来てくれたりします。
ひたすらマフィアをぶっ殺す映画ですが、それでも妙に悲しくて妙に優しい印象がある。
あと登場人物の個性が強く、彼等のしぐさや、ふと漏らす本音が面白い点です。
テンプレマフィアではなく作りこまれた生きている人間という感じがしました。

犬が殺されるところは映ってないので、
なんとか耐えられるって、犬好きの人が言ってた。
(残念ながら犬の死体は映ります)

内容ばれ

事態を聞いたマフィアのボスが、息子をぶん殴って
まずジョンに謝罪の電話を入れるあたりは、
うむ現実的!って思った。
ああいうのは、ジョンというキャラクターもボスも物語内で格が上るいいシーン。
残念ながら正解は息子を拘束してジョンに差し出す事だったんだけども…
もっと言うなら息子を3人ほど作っておくべきだったな。

キャラクターの中ではボスが特に面白かったです。
人を殴る時に丁寧に上着を脱ぐところや、
最後のほう、激おこジョンに追いかけられながら思わず笑ってしまうところ、
生きるか死ぬかの瀬戸際で早く部下に銃を渡さないといけないのに、
ついおふざけをして引っ張り合いっこしてしまうところ。等々。

ボスは「こここそが我々に相応しい世界だから、
神はお前から妻を取り上げた」ってジョンに言ってましたが、
東洋っぽい非科学的な話をしますと、
以前職場の人が「運の強い人は、自分の受ける厄を弾いて
家族や近しい人に肩代わりさせてしまう」というような話をされたことがあり、
その法則で言えばジョンは自分の大量の殺人で本来なら受けるべきだった罰を、
妻と犬と例のひとに肩代わりさせたのではないでしょうか?
(などと耳元で囁いて、ジョンを泣かせたい)

DVD特典は奥さんとジョンの生活映像30分ほどと
デイジーとジョンの生活30分ほどがいいな。それなら買います。
犬友達ができて、「デイジーちゃんのパパ」って呼ばれて
困惑するジョンが見たい!

スタントコーディネーターのかたの初監督作品なので、
アクションも色々アイディアを見せてくれて相当楽しい。










2015.10.27 サイトに掲載

2015.12.30 再掲載





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