「キングスマン」 マシュー・ヴォーン監督の4年ぶりの新作です。 X-MEN続編から降りて、キック・アス続編からも降りて、どこへ行かれるのかと思ったら 英国紳士スパイものアクション虐殺ブラックコメディでした。 できれば2年に1回くらい新作を見せて下さると嬉しいです監督…。 母親の再婚相手に暴力を受ける毎日の青年エグジ―は希望なく生きていたが、 高級スーツに傘といういかにも紳士然とした謎の男ハリーとあるきっかけで出会い、 国家に属さない諜報組織「キングスマン」にスカウトされる。 彼はほかの候補者と共に過酷な課題をクリアしていくというあらすじ。 えっと、高級スーツに眼鏡に傘という格好のコリン・ファースが 猛烈なアクションをして、血を浴びて、前髪が乱れるという、 腐女子的に映像ドラックみたいな世界が展開する大変な映画です。 しかも若造を育て上げて一人前にする、 男同士の、血みどろのマイ・フェア・レディ物語でもあります。 ちょっと懐かしい感じのするスパイ道具が活躍するのは道具マニア歓喜だし、 あと映像の速度を上げたり下げたりをこまめに切り替えた コミックっぽいアクションは必見。 義足の両足にソードを仕込んだ敵の最強の戦士は黒髪長髪の女性で、 このひとの格闘シーンはどれも名シーンです。 ただし流血は多めで、きっついジョークセンスも炸裂するので 「キック・アス」が合わなかった人は、この映画も無理かもしれません。 見に行く人はネットの感想やイラストや二次創作を見ずに 早いうちに行った方がいいかも…。 重要な部分ばれ注意 犬も死なないし候補生も死ななかったので、 そういうラインの作品なんだなって油断してたらやられた…!! 彼の事をすごく好きになってたので、心を立て直すのに時間がちょっとかかった。 あの場面、本来の彼なら切り抜けられそうな気がするので、 手の汚れた自分に心が折れて抵抗する気力を失った、一種の自殺ではないかと思う事にしました…。 なので教会のシーンはとてもつらいですけど、でも凄かった。何度も見たいです。 「中絶医のユダヤ系黒人男性と性交した」ってコリン・ファースに言わせた功績で マシュー・ヴォーン監督は爵位をもらってもいいと思う。 そしてあの台詞を言った時のコリン・ファースの表情から、 若い頃はエグジ―以上に熱血単細胞な若者だったんじゃないかなと思いました。 きっと推薦者から頻繁に頭をぽんぽんされ、「落ち着け」って言われてたのだと思う。 そして流れるようにカップリング話をしますが、 むかしエグジ―のお父さんにハリーが片想いしていて、 それがああいう風に残酷な結果に終わって、 マーリンはハリーに片想いしていて、 エグジ―が現れて、それで…っていう流れだと思います。(思いますじゃねえ) この映画でコリン・ファースが好きになった人には「シングルマン」を超すすめます。 コリンが若い男の恋人と死別する話です。 あとこの映画でマーク・ストロングを好きなった人は「裏切りのサーカス」を超すすめます。 コリンとストロング氏がガチでカップルのスパイものです。 (一部では転生ものではないかという噂がある/笑) 箇条書き ・この映画、すごく潔癖で、差別的なことを口にした人間は死にます。 低所得者層のひとは多少悪辣な事をしても死にません。 アーサーの平民蔑視も、ラストでエグジ―を見直す前ふりかと思ったら 死んでいい奴ですよという示唆だった。びっくり。 ・ダルモア62年物って気になって調べたら最後の1本が1687万円とかで売れたそうで、 グラス1杯100万円くらい…そりゃこぼしちゃダメだ! ・シャトー・ラフィット・ロートシルト1945年は300万円ほど。 なんだかお安く感じる…。(楽天で売ってるし) あのシーンはメインディッシュがマックなのが、皮肉利いてていいな。 ・スパイ映画のスパイに憧れたというヴァレンタインと、 スパイ映画の悪役に憧れたというハリー。ヒーローとヴィランの交わす会話はこうでなくちゃな。 ・げろねたは絶対回収するだろうなとは思ったけど、まさかああなるとは。 2015年、げろを吐く映画10本目です。 ・滅茶苦茶な映画のようですが、伏線は結構細かい。 エグジーは動物を殺せないとか、手癖が悪いとか、毒薬の話とか、仲間思いとか、全部前ふりがある。 ・ガラハッドって円卓ではどんな人だっけって調べたら、ランスロットの息子なのか…(無知)。 母親が魔法の力を使って無理やり結婚して子が出来るけど、 やがて魔法が切れて妻子共捨てられるってこれハリポタのトム・リドルですね。 今回父親との縁が薄いねたを盛りこんだので、聖杯を見つけるねたは次回かな。 ・彼は、死亡が確認されてないので、どうなんですかね。 澄まし顔でアーサーの椅子に座っていてもいいし、敵側として出てくるのでもいいですね。 ・音楽は、これ絶対「X-MENファースト・ジェネレーション」と同じ人だ! って途中で確信しましたけど、やっぱりそうでした。 ・しばらく威風堂々を聞くとびくっとしそう。 ・最後の王女のごほうびは、あれは英国人男性的には嬉しいことなの? 王道が一番だと思うよ…。 マシュー・ヴォーン監督は悪ノリとブラックジョークと血みどろ趣味を封印して、 「X-MENファースト・ジェネレーション」みたいな ワクワクしつつも美しい心の痛みを描いた映画を撮れたりもする才能豊かな人ですが 彼の一番の萌えは「育成・特訓」なのだと思う。 「スターダスト」にも育成特訓があったし、「キック・アス」にも育成特訓があり、 「X-MENファースト・ジェネレーション」もごく自然に育成特訓を差し込み、 今回に至っては育成特訓がメインです。どんだけ好きなの!?と言いたい。 追記 あと「X-MENファースト・ジェネレーション」と「キングスマン」にもうひとつ 共通点があるのをネットで知りましたが、それはトゥインキーと言うお菓子です。 「ゾンビランド」で有名になったやつ。 「X-MENファースト・ジェネレーション」では画面に出ていて、 「キングスマン」では高級貴腐ワインが合うとハリーが名前を上げています。 2015.09.13 サイトに掲載 2015.12.30 再掲載 戻る |