「ビッグ・アイズ」








ティム・バートン監督

60年代に、大きな瞳の子供を描いて有名になったモダンアートの画家キーン。
実は絵を描いていたのは彼ではなく妻で、キーンは画家を騙っていただけだったという
ドラマのような実際の事件とその裁判を描いた映画です。
ティム・バートン監督はマーガレット・キーンの絵のファンで、
どうしても映画にしたかったとのこと。
(でも映画としてはあまりティム・バートンっぽくない)

自分で創作をする人と、しない人では見かたがちょっと変わると思う。
しない人はモラルハランスメント被害に遭った、
ちょっと意志の弱い女性の映画に見えるだろうし、
創作をする人にとっては自分の作品を奪われて
作品を描いた理由や意味などをどんどん捏造される恐怖の映画に見えます。

口が達者で虚言癖のある夫の役を
クリストフ・ヴァルツさんが楽しそうに演じられました。

ラストばれ注意

2人はバツイチ同士、共に画家として出会うのですが
夫が結婚前に描いていた風景画も、
実は別の画家の作品にサインだけを足したものだと分かるシーンが終盤にあってゾーっとしました。
うそつきは泥棒の始まりって言いますけど
虚言癖は色々な精神疾患の始まりだと、私は個人的に思います…。

最後、裁判で双方の主張が真っ向から対立して埒が明かないから
1時間で絵を描いてください。ということになって、
それまで立て板に水の如くぺらぺら喋っていた旦那がぴたりと黙って
椅子を調整したり、持病の腕の痛みが!ってやりだして、
対するマーガレットが女王のように堂々と、生き生きと絵を描いて
真実を証明したところ、すごいカタルシスがありました。
現実とは違うんだろうけど、さすが映画、感動的に盛ってくるなー!って感心してたら
1時間ドローイングも、持病の腕の痛みが!も全部現実にあったことだった!!
旦那、なぜ勝てると思ったんだ…。
旦那は最後まで主張を変えず、無一文で亡くなったそうです。

マーガレットさんも、結婚に2回失敗して、そのあと宗教に傾倒して
3回目のご結婚でとうとう幸せを勝ち取って、と波乱万丈の人生ですが、
自分の作ったものを奪われ
他人が苦労を語ったり、創作秘話を披露したりする環境は、
歯を永久にドリルで削られ続けるような地獄ですから
いま伸び伸びと創作されているなら良かったことです。

素敵な60年代ファッションは、ティム映画お馴染みのコリーン・アトウッドさん。
娘さんのお洋服が特にかわいかったな。










2015.01.29 サイトに掲載

2015.12.30 再掲載





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