「それでも夜は明ける」 スティーヴ・マックイーン監督 財産と妻と子を持ち、平穏な生活を営んでいた 黒人のヴァイオリン奏者が、 ある日偽の演奏の仕事を持ちかけられ、 打合せをしている最中に酒に薬を盛られて誘拐され、 意識が戻ったときには奴隷として売られていた…… というあらすじ。実話です。 マイケル・ファスベンダーさんと ベネディクト・カンバーバッチさんが出ているので見ました。 ぞっとするような皮肉っぽさと、 ものすごく綺麗な冷たい表現、 物体を輪郭も見えないような超アップで撮ったりとか、 人の顔を凝視するみたいな表情の撮り方とか、重厚でいて先鋭的な映画でした。 とくにファスベンダーさんを映す時の、食いつくような集中は凄いです(笑)。 監督のミューズはファスベンダーさんだそうです。公式発言きたよ。 子供の悲鳴の高音部って弦の音に似てるねそういえば…ってこの映画で気付きました。 気持ちの弱っている時はおすすめしません。 内容ばれ 白人の治産者はもちろんギルティ。 でもその妻もがんがん虐待かましているのでギルティ。 黒人のひとが無罪かと言うと、女主人となった元奴隷の暮らしぶりを見れば一目瞭然のギルティ。 宗教はまったく助けにならず。 善の側というものはこの映画の世界にはない。 ブラピとパーカーさんだけがプカプカ浮いたように善良なんですけど、 ラストに突然善人投入が始まると、途中が途中なだけになにか不安になってしまうというか ブラピは殺されて畑に埋められたんじゃないかと思っていました。 そしてパーカーさんのお店は焼打ちにあいそう…。 最初、普通の人間としての意識が折れるまで殴られるところが怖かった。 (いや、暴力シーンはどこも怖かったけど) それと主人公の首吊られシーンの背景の、超牧歌ターンが終わらないやつ。 ファスベンダーさん演じる農場主は、冷酷とか非情とかいうよりも 精神の病の人で、怒ると自分をコントロールできない。 現代でもああいう人は各国にたくさんいて、家で妻や子をぶん殴ったりして なんとか我慢して生活しておるのだと思います。 奴隷制度が「主人側に」悪く作用する点の1つとして、 ああいう病理を持つ人をどんどん悪化させてしまうという所がある。 ファスベンダーさんいい演技でした。夜中に熟睡しているときに 基地外の主人が突然枕もとで大騒ぎを始めるのって心底ホラーですよね。 奴隷制度およびそれに類するもの、 支配欲を満たし尚且つ経済的実利のある何かはこれからもずっと近くにあって、 光ある限り何度も蘇るRPGのラスボスの捨て台詞のように何度もコンニチハすると思います。 誰も被害者にならず、誰も加害者にならないように、 そのための強さと努力は人間が存在する限り永久に必要です。 状況に従ってしまう性質のひとには前者が難しく、 他人を支配することに快楽快感を覚える人には後者が難しいだろうけど。 タランティーノの「ジャンゴ」と、ストーリーラインは似てるけど全然違う。 続けて見るとたぶん話が混ざって面白いと思います。 夜明けは全員の上に来るもので、そう考えたら映画のラストで夜が明けたとは到底思えないので 邦題はなんかちょっと違う気がします。(原題直訳は「12年間の奴隷生活」) 2014.03.14 サイトに掲載 2014.12.27 再掲載 戻る |