「ジャンゴ 繋がれざる者」






タランティーノが、自分の大好きな西部劇をノリノリで撮った作品です。
血袋かよ!っていうくらい血が吹き出て、ともかく死にます。
タラちゃん本人も出てきて楽しそうに死ぬ。

スマートに撮られていて、編集もクールなのは
「イングロリアス・バスターズ」のほうだと思います。
例えるなら昼間にきりりと働いているお父さん。
「ジャンゴ」は家で晩酌しながら酔っ払って気分よく自慢話をしているお父さん。
でもどっちもタラちゃんだなあという感じ。
「ジャンゴ」は、あの効果音と共に人物がアップになる効果とか
スローモーションの使い方とか、わざと昔っぽく、もっさり撮ってる感じ。

あらすじ
売られて行く途中だった黒人奴隷ジャンゴは
賞金稼ぎの元歯科医キング・シュルツにスカウトされ、彼の助手となる。
奴隷制度のないドイツ出身のシュルツには黒人に対する偏見がなかった。
彼等2人は、生き別れになったジャンゴの妻ブリュンヒルデを探して
農場主カルヴィン・キャンディに接近するのだった。

元歯医者のキング・シュルツがともかくいいです。

ラストばれ

Drシュルツは本人の生まれ持った性質はすごく慎重で頭の切れるタイプだと思うのです。
でも割とどーでもいいと思っている部分もあり、しかも妙なところで堪忍袋の緒が切れる。
人を殺すのに躊躇は全然ないし、息子の目の前で父親を殺すのも
「愛する者に看取られるなんてすばらしい最期だ。遺言も残せる」とか
本気で言っちゃうけど、
でも弱い者が一方的に虐げられているのは苦手で直視できない。
これらはたぶん彼の中に矛盾のないルールのようなものがあるのでしょう。
ブリュンヒルデの名前にロマンを感じ、
ジャンゴに対して保護者のような、教師のような気持ちになった彼は親切で紳士でしたが、
かといって善人とも言えず、
異常な新大陸だからこそあんな風に常識人に見えたのであって
欧州にいたら犯罪者になっていたかもしれない、
そう思わせるアンバランスで危うい役でした。
全然後悔はなさそうだったのでよかった。
「ジャンゴ」は彷徨っていた彼が救済される話でもあったような気もします。
クリストフ・ヴァルツさんは、タラちゃんの書いたキャラクターを演じるのが一番輝くな!

カルヴィン・キャンディはディカプリ夫なんですが、
いい感じに怪演でした。フランスかぶれだけどフランス語は話せなくて、
性格悪くて残虐だけど超シスコン。ごく普通に差別主義者だけど黒人のじいやに頼りきり。
キャンディとドクター・シュルツの対峙するシーンは濃ゆかったです。

プチKKK団みたいなのの、マスクで前が見えないフガフガシーンなどは
前作のナチに対してもそうでしたが、
レイシストを徹底的に笑い物にするタラちゃんの姿勢、好きです。
(悲惨な差別を詳細に描写されるよりこっちのほうがいい)

ただ、全体的に30分ほどカットしたほうがいいと思う。
手配書の伏線を回収しなければならないとはいえ、
捕まって採掘現場に売られるくだりはちょいと冗長。








2013.03.12 サイトに掲載

2014.07.01 再掲載





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