「華氏911」






ブッシュの再選を阻むために撮られたドキュメンタリーです。
この映画が上映されるのもすごいし
この映画が上映されていながらブッシュが再当選してしまうのもすごい
いい意味でも悪い意味でもアメリカはすごい。

冴えたユーモアのナレーションと共に、元大統領の映像が流れます。
映像のリズムや、合わせる音楽が相変わらず鬼のようにセンスがいい。
もちろん使用する映像の取捨選択も神のごとき正確さ。
このドキュメンタリーを見るとブッシュ元大統領が
金勘定にしか興味のないアホバカマヌケに見えます。
(いくらなんでもそんなにひどくはないはず……)
まず始めに軽くブッシュ元大統領の不正当選に触れ、
次にブッシュ家とビン・ラディンの癒着、お金の流れを端的に説明します。
911が起きる要因を作ったのがブッシュ元大統領の怠慢であり、
事件後に国民の怒りをそらし顧客を守るためイラク侵攻を行ったのも彼であり、
そして軍人の手当てを削減し、退役軍人病院を閉鎖しようと働きかけたのもまた彼である、
という内容を語ります。

印象的だったのは
連邦議員535人のうち、子供を軍へ送ったのは1人だけという事実。
そして軍のスカウトは高級住宅地ではなく
低所得層の集うショッピングモールで新人勧誘するという事。
低所得層の若者は収入と学歴を得るために軍へ入隊するという事。

家族や親類の多くが軍人であるという女性は
「戦争反対を標榜する人に会うと自分達を馬鹿にされたような気がして
苛立ちを感じていた。イラク侵攻で息子を亡くすまでは」と語っていました。

怒っている時に正常な判断をするのはとても難しいし、
分かりやすい大義名分はとても魅力的だし、
大勢の人がそれに飛びつくのを止めるのはたぶん不可能だし、
同様の事はこれからもまだまだ繰り返されると思います。
(あ、でもこれは話が変わりますが、怒って暴動やデモを起こさない人種や民族というのは
多民族集団において後回しにされたり蔑ろにされたりしやすいのだなという印象も持ってます)
そしてこれは全然他人事ではない気がします。








2013.01.10 サイトに掲載

2014.07.01 再掲載





戻る