「ダークナイト ライジング」






ノーラン監督のバットマンシリーズ完結作品です。
自滅と幸福の間をあやういバランスでよろよろと歩いていた彼。
崇高な精神を持つ、現代に蘇った騎士。
そのありえないくらいの自己犠牲は、人生をかけたSMプレイに見えたほどです。

でも彼は体ではないどこかを病んでいて、常に蝕まれていた。
飢えを満たすため、正義に中毒していた。
ノーランとベールの作り上げたブルース・ウェインは彼らだけのもので、
他の誰にも動かせないキャラクターだと思います。
何年か後に他の監督によってリブートシリーズがスタートするでしょうけれど
本当に気の毒です。
この3作を越える話も登場人物も、ちょっと想像が出来ない。


ネットでねたばれを目にする前に、早いところ見ておいた方がいいです。

内容ばれー

・ノーランの映画は予告で「こんなすごい所見せちゃっていいの!?」って思っても
 本編で必ず「うわー!あんなの全然大したことなかったー!」って思わせてくれるので好きです。
・ノーランの作品は7割の人を「ちょっとむずかしいけど派手で面白いねー」と楽しませつつ、
 残りの2割の人をも振りかえらせる歪んだ要素、職人芸を入れてくるのが
 王者の中の王者たる匠の技だと思う。
 (多くの人が楽しむものは何であれ受け付けない1割の人はさすがに無理だけど)
・あんなに色んな人に「死にたいんだろ?」的なことを言われるヒーロー、
 ほかにおるだろうか。
・最初のシーンで赤川次郎先生の某トリックを懐かしく思い出したのはたぶん世界で私だけ。
・トンネルでのバットマン復活のシーン、燃えたわー!
 アメリカのひとは本国で我慢できずウェーブしたに違いない。
・警官に撃たれたバットマンが、咎めるような眼でじっと相手を見つめて
 警官があやまるところ、さすがおぼっちゃまって感じでした。ジェントリィ!
・なんで最近の映画は相思相愛の男2人が泣きながら別れるシーンが多いんだろう。
 とりあえずアルフレッドを泣かした罪でおまえんちの電気を止めてやる!
・deshay deshay! basara basara!(でしでし!ばさらばさら!)って
 「rise」または「he rises」っていう意味なんですね。
 「登る」もしくは「飛び立つ」。考えると泣ける…。
・シリーズ通して女運は最悪だったけど、男には総モテだったな…
 ある意味ウハウハの人生とも言える…。
 紳士方はみなさん素敵で、どなたか一人とか到底選べませんが
 ゲイリーは小さくて「あー、弾は当たらなそうだよねー」って思いました。
 爆弾と一緒に詰まってる姿は緩衝材みたいでした。
 (裏切りのサーカスの)スマイリーと同じ人には全然見えませんでしたが
 激昂すると、「アズカバンで苦労した!」って叫んでたシリウスの演技が連想されました。
 一瞬だけ出てきて会話して消えた方はマジ格好よくて、マジ格好よくて(2回)
 なんて贅沢なキャスティングだろうと思いました。格好良すぎて拝んだ。
・ただ、「持たざる者が、踏みつけてきた者を排除する」という暴動は
 日本でも、或いは世界規模で起こる可能性はまったくゼロではないと思って
 どきどきしたのに、途中で遺志を継ぐ話にすり替わってしまったのがちょっと残念だった。
 (子子孫孫まで大貧民役をさせられるトランプゲームなど面白い訳がない。
 プレイヤーを全員殴ってトランプを終了したくなる気持ちは分かる)
・作中に出てきた「核融合炉」は
 ウランやプルトニウムを使う「核分裂炉」に対して
 水素やヘリウムを利用するため放射能はほとんど出ず(完全に出ない訳ではなさそう)
 放射性廃棄物もあまり出ないらしい(完全に以下略)。
 現実に各国協力のもとフランスに実験炉の建設が計画されていて
 日本もいっちょ噛みしてるらしい。
 現実すげえ!私の知らないところで理系の人はどんどんSFな事を!
 ただべらぼうに金がかかるらしいので、ゆっくり進めるっぽい。
 そりゃウェイン産業がちょっぴり傾くくらいだもんね……。
 詳しくはwikipediaのページで!
 暴走を引き起こさない代わりに、エネルギーを得るのが難しいテクノロジーみたいだから
 どっちかというと簡単に中性子爆弾化できたのがファンタジーのようですね。
・ブルースに近寄って熱烈なキスをしたキャットウーマンの次に
 順番待ちのゴードンが近寄ってきたので彼もキスするかと思いました。
 というかあの瞬間まで正体を知らなかった彼にむしろ噴く。
 ラブコメ漫画のヒロインか!?
・作中でのドンデン返しは2つ…3つ?あ、4つ?ありましたが、
 3つは分かったし、ラストがどんな場面になるかも途中で分かりましたが、
 最後のドンデンについては本当にびっくりしたし、やられたー!って思いました。
 伏線も幾つかあったんだよな…なんでこのやりとり
 2回も繰り返すんだろって思ったりとかしたよー!

細かいネタが色々繋がっているので、前2作は予習必須。









2012.07.29 サイトに掲載

2014.07.01 再掲載





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