「落下の王国」 「ザ・セル」から6年。ターセム監督の新作(2006年作)。 スタントの仕事で下半身不随の重傷を負った男が 腕の骨折で入院している少女に、 奇妙で美しい叙事詩を話して聞かせる、という粗筋。 現実世界の人物や、アイテムが物語に組み込まれ 語り手の男の過去や人間関係、絶望、 聞き手の少女の気持ち、勘違い、願いがすべて展開に反映され、 どんどん変化していきます。 今回はCGを抑えて、実際にある遺跡で画面を作ってあるのですが それがもうねー。 ターセム監督が撮れば何でも芸術的に撮れちゃうと思うんですが そんな監督が世界遺産撮っちゃうとねー。(ロケ地は24ヶ国以上) DVD欲しくなりますよ。 どの遺跡も凄いですが、中でも私はインド人の妻が幽閉された迷宮と、 黒の兵士達に追いつめられるアーバーネリーの大クンダ http://www.kamit.jp/01_introdctn/xabaneri.htm に度肝を抜かれました。なんか、うん、インドの人が数学に強いのを実感。 (監督がインド人なのでインドの遺跡が多い目) あ、しかし偏執的に美しいですが 綺麗ですねハイハイ、という映画では決してないです。 物語の視覚的美しさと、 現実世界の男と少女の優しさ狡さ悲しさのバランスが絶妙なんですよね。 静かで、しみじみと良い映画です。 実は「ザ・セル」はあんまり合わないなーと思ってたんですが この作品は好きです。 今ならレンタル開始したばかりなので新作の棚にあります。 レンタル版のパッケージは最悪ですが。 あれじゃまるで変態戦隊モノみたいじゃないか! 内容・ラストばれ 病院の廊下の向こうに黒い兵士が仁王立ちしたところとか上手かった! 当時のレントゲン技師ってあんな大変な格好をしてたんですね。 衣装は石岡瑛子さんによるもので、どれもエキセントリックかつ豪奢。 「インド人」が実はインド人ではなかったのが、最後の上映会で分かるところも おもしろい仕掛けだった。 (英語に堪能であればもっと早く気付けるらしいけれど) ところどころグレゴリー・コルベールさん?とか クエイ兄弟?(←最近作品を見たばかり!)とか 思う箇所がありますが、まあセーフの範囲でしょう。 あと関係ないけどギリアム監督の「バロン」とかも思い出す。 終盤で語り手の男の失望を反映して 物語が血みどろに、人物は卑しくなっていくところ、 創作をしたことのある人のうち幾人かは、 ちょっと痛いような気持ちになると思います。 ラストの無声映画時代の映像、 ロイの怪我を考えると一体何人の人が重度の障害を負ったり 亡くなったりしたんだろう?と思うと恐くなった。 (新しく撮った映像も混ざっているそうだが区別は付かない) CGを発明した人に祝福あれかし。 私は、ロイは復帰できなかったと思います。 人間は時々馬鹿なことをやらかすけれども 作り出すものは本当に美しい。 建造物、物語、映画、何もかも見事で素晴らしい。 ありがとう、ありがとう。 汝、落下を畏れるなかれ この美しき世界を仰ぎ見よ 2009.02.15 サイトに掲載 2011.08.08 再掲載 戻る |