「THE 有頂天ホテル」 ジブリを除いた邦画の中で1番面白いと私は思いました。 「12人の優しい日本人」と競ります。 ある高級ホテルで、年末から年始の2時間に起きる 様々な事件を描いた映画です。 次々と投げられる伏線がまた次々と回収されていく手際は まるで見事なジャグリングのようでした。 ある事件の進行している画面の隅に、また違う事件の人物が映り、 あるときは音が聞こえ、キーアイテムが交錯し、 まるで2画面を同時進行で見ているようで 1秒だって気が抜けませんでした。 そして三谷さんの人物の作り方があまりに優しいので (それは善人ばかり出てくるという意味ではなく 長所というのは短所の結晶なんだよーとでも言いたげな) 見ているこちらも、まるで天使みたいな視点で登場人物を 応援してしまいました。 「がんばれー」とか「うしろうしろ」とか。 ねたばれ 「奥さんはルームサービスの値段を気にしてるんじゃなくて 一緒にお食事がしたいんだよ!どうして気付かないんだばか」とか 「あなたは本当はそんなことしたくないんだよー気付いてー!」とか 「この子はちょっと考えが足りなくて寂しいのが嫌いで 賑やかで楽しいことが好きなだけなんだ。悪い子じゃないんだなー」とか。 で、ところどころしんみりする良いシーンや泣かせるセリフがあるのに 照れなのかなんなのか、前後がおかしかったりBGMが絶妙だったりして 全然泣けないのです! ねたばれ 「大人になれよ」と言う西田敏行のセリフ自体はいいのに、 「お前が言うな!」というエピソードが満載だったり、 暗闇でピストルを見つめて自殺を考える佐藤<鴨>浩市の部屋に うっすら隣で歌う慎吾さんの歌声、 「消えてなくなれ」「あきらめてしまえ」 が流れてきたり。 あとギャグ。三谷さんのギャグは、 ギャグを得意とする他のクリエーターさんに比べると 基礎となる知識を必要としないものが多い。 つまり先鋭的ではないが鑑賞者の年齢や国籍や趣味を選ばない。 印象としてはやはり優しく丸い。 ねたばれ 白塗りをして凄いことになった伊東四朗が エモノを持った探偵に追い掛けられるシーンがツボにきて、 映画を見終わったあとも、しばらく物真似をしては笑っていました。 つかこの映画を見た1日はずっと幸せで ずっと笑っていました。作った人ありがとう。 パンフレットでは役者の皆さんが競って 「私と三谷さん」の話を書いていらして これではパンフレットと言うより 三谷さん総受本ではないか!と思ったので、 ファンとしては手に入れておき 2006.01.23 サイトに掲載 2011.08.08 再掲載 戻る |