「プレステージ」



19世紀末のロンドン。
修行中の奇術師仲間アンジャーとボーデンは、
とある事件をきっかけに、
互いに憎みあい執着し合う凄まじい泥仕合を始める…
…というもの。

奇術師2人の執念が相当えぐい。
互いの舞台はこそこそ変装して見に行く。
奥さんと子供を見て嫉妬。互いに舞台の邪魔をする。
互いに一生残るような怪我をさせる。
殺すか愛するしかない聖闘士の女子みたいな奴等です。
普通に見ると、
「ちょっぴり驚きの豪華なハリウッド映画」ですが、
ストーリーの技術的な部分に興味のある方は
是非原作の「奇術師」を読んでから御覧ください。
印象が変わります。

素晴らしい。ノーランの才能に嫉妬(笑)。
映画化は無理だとずっと思ってました。
何故って、
それこそイナズマが飛び散るほどのバカトリックだから。
いえ、原作はSFゴシックファンタジー歴史恐怖小説みたいな
ジャンル分類できない硬質で素晴らしい小説なのですが、
すみません私の読書はミステリーが基本なので
最後のオチがあれだとあれなのです……。
でも映画版は、何回も何回も何回も仄めかしがあって、
脱力せずに最後まで見られました。
原作プリースト先生は、「プールの傍で世間話していたら
話の途中で突然突き落とされた笑顔で。しかも5月に」
って印象ですが
ノーラン先生は「準備運動させてくれて、
シャワーで水を掛けてくれて、
頑張れ!って感じで背中押してくれた」って印象。
私は不条理映画にするか、ミュージカルにするしか
道はないと思っていましたが、
ノーラン監督には最初から勝算があたんだなーと。
映画化というよりも、同じアイディアを使って
2人の人間が別の話を考えたのに近いですね。
構成でここまで変わるんだ!

ねたばれ。

銃殺、溺死、縊死、そして「スペア」が、
交響曲のテーマのように消えては現れ怖かったです。
(水槽を割ろうとするボーデンの表情には、密かにぐっときた)
原作も最後にぞっとする怖さがありますが、
映画の怖さはギャアーっていう狂気の怖さですね。
でも私は文系なのでよく分からんが
複製転移機より、ただの転移機を作る方が
簡単じゃないのかなあデビットボウイ…。
一工夫加えるのが匠のこだわりなのか。

監督の初期作品「フォロウィング」とか「メメント」とか
ああいう針みたいに尖った作品が好きだった人(多い筈)は
「こんな大衆に媚びたノーランなんか見たくねぇ!」
「俺たちのノーランたんを返せ!」
っていう悲しい雄叫びをあげていると思います。
君達にはミシェル・ゴンドリー監督をあげるから!
それで痛み分けだ!時々交換したりしよう!元気出せ!
(弁当のおかず?)
尖った作品とエンタティメント、
どっちもできるなら(それも凄いことだけど!)
どうかエンタティメントをやらせてあげようよ!




2007.06.14 サイトに掲載

2011.07.04 再掲載



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