「ミスト」



■スーパーマーケット閉鎖空間型
 クリーチャー&サイコ&スプラッタホラーです。
■原作はスティーブン・キングの「霧」です。
 様々なゲームや映画に影響を与えた20年前の作品。
■映画としての出来はいい。ラスト以外は原作通りの粗筋。
 「霧」の映画化としてはほぼ完璧で、
 これ以上の物は作れないと思います。
■原作読んでない人が映画か小説のどちらかを見るとしたら
 映画をすすめておきます。
■テレビ画面よりは劇場鑑賞がよかろうと思います。
■しかし見終わったあと、最低最悪の気分になります。
 ↑これ重要


拝見しているブログのあちこちで
「衝撃の15分!」「原作とは異なるラスト!」
と書いてあって、
もうそういう風に書かれると辛抱たまらないので(笑)
見に行きました。

話としては結構バカバカしいです。
キングやダラボン監督のように実力ある人が、
地道に形容を積み重ねて初めて成り立つストーリーです。

映画のあらすじはほぼ原作通りで、
変更は大きな(人間こえぇぇぇ!)エピソードが1つ追加され、
いくつか削られていたくらいです。
(あの明らかに余計なお色気シーンはなくなった)
セリフは原作の物を採用しつつ色々書き加えられています。
なんだかんだ言って、キングは人間のことが好きだし
人間に期待を持ってらっしゃるように思いますが
でもダラボン監督はそうでもないの?
というセリフが随所にあります。
残念ながら私も監督側の感性かなあ……。

(下記は内容に触れます)

キングの「霧」はファンの多い作品ですが、私自身は苦手でした。
何故なら登場人物のうちの1人、ミセス・カーモディが、
ともかく駄目なのです、よ!
スーパーマーケットに閉じ込められた当初、
彼女は「神の怒りよー!」とか叫んで煙たがられていたのですが
人々が段々と判断力を失うにつれて信者が増え始め
最終的にはリーダー的存在になって生贄を要求しだすという
あのプロセスがうわぁぁぁぁ!もう、最悪!
「あんな事あり得ない!」「人間はあんなに馬鹿じゃない!」
とは言い切れないところが私にとってプチトラウマでした。
(読んだ当事、まだ昭和でした…)

映画版のミセス・カーモディですが、
1.3 倍 パ ワ ー ア ッ プ し て ま し た !
異変が起きたとき、彼女は便所で泣きながら
みなのために祈るんですが、その祈りの内容が
よく聞いたらとんでもなくて
彼女の善とこちら側の善が異様に違うことにまず絶望。
あと、マーケット内に信者が増えていくにつれて、
彼女は段々綺麗になってゆくんです。
自分の言葉に人が従うという、
彼女の人生で皆無であっただろう経験に
一瞬浮かぶ嬉しそうな表情!きらきらした目!
うわー、嫌だ!
(しかし映画版ではっきりと
「ユダヤの神」と言っちゃってたようですが)
(原作では明言されてなかったと思いますが)
(余計なお世話ながら大丈夫なのか心配)
他の登場人物ですが、
小説のアマンダはAI搭載のマネキン人形みたいな人でしたが
映画のアマンダは好感が持てました。
あとマーケットの小太りの店員オリーは映画版が異様にかっこよく、
小説版と比べると行動やセリフがこまめに変えられていました。
監督、オリーが好きなの?(笑)
主人公はすべての登場人物の中で一番善良で
ありえんくらい良い人でした。あの「地獄に堕ちろ」ママより余程。
あのラストはこれまでの善行に免じて与えられた加護でしょうか。
それとも神などおらんヨということでしょうか。
でも結局ミセス・カーモディの予言は殆ど的中しているんですよ。
ラスト含め。
超いやだ……。

(ラストばれ注意)

巨大生物のシーンは原作でも印象的でしたが、映画も美しかったです。
上の方は鳥が巣を作っていて、群れて飛んでいるのが見えました。
ラスト…は…まあ…。
ハッピーエンドにして最悪のバッドエンドって
成り立つものですね……。あと、科学兵器すげー。
人間が一番怖い。人間が一番優しい。人間が一番強い。
なんでも一番。すごい。




2008.06.01 サイトに掲載

2011.07.04 再掲載



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