「脳内ニューヨーク」




……うーん、映画通のひとと映画評論家はめろめろになるかもだけど
製作費が回収できないんじゃないかな…そっちへ行くと。

あらすじを一応書くと
「劇作家の主人公は、賞を受賞し、
莫大な賞金を受け取ったことをきっかけに、
彼の奇妙な人生と、生と死と老いと病と別離と苦悩を
舞台劇で完全に表現しようと試みる」
という感じですが、あらすじにあまり意味はありません。
幻覚のような現実と、リアルな舞台劇が交錯し、
主人公と私達を混乱させます。

雑誌などに載っている
「自分の人生を舞台化した脚本家が、自分を演じる役者に
想い人を取られそうになって慌てる」とかいう、
ちょっとコメディッチックな紹介文は信用しないでください。
それはごく一部分なので。

面白ったところ(ねたばれ)

■主人公を囲む3人の女のうち、
 2番目の女の家が、なぜか常にちょっぴり火事。
 その燃える家で長年普通に生活していたのに
 平安を手に入れた日に煙を吸って死んでしまうのは
 なんのメタファとかは意地でも考えない。
■カウンセラーの女の靴ずれが酷くなっていく。
 2回目なんか紫色に腫れあがっている。
 なんのメタファとかは(略)
■余命わずかな実の娘に
 「僕はお前を捨てた。僕はホモで、肛門交合をしていた。許してくれ」
 と身に覚えのない行状の謝罪をしろと強要されて、言われるままに詫びたら
 「許さない」と泣きながら言われて、しかも百合の人に
 「これで満足?このホモ野郎!」と罵倒される。
 誰も笑わないので笑えなかった。笑うところではなかったのかも。
 なんの(略)メメタァ!(略)


カウフマンは脚本作品の方が好きかも知れないです。
これまでもきっと
「チャーリー…ここはもうちょっと俗っぽいほうがいいんじゃない?」
と監督たちがセーブしていたに違いない。

邦題がすごくうまい。
原題「Synecdoche, New York」




2009.12.10 サイトに掲載

2011.07.04 再掲載



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